大手生保が運用好調でも単純に喜べない理由 販売面では顧客の大手生保離れが顕著

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最高益が並ぶという決算の結果だったが、今後の収益環境について、日生の児島一裕常務執行役員は「楽観はできない」という。

長期にわたって保険金支払いを約束する長期負債を抱える生保では、長期の円建て金利資産への投資が運用の中核となる。ただ非伝統的な金融緩和政策による長期も含めた超金利低下が長引く中、各社とも超長期債の買い入れを抑制せざるを得ない。代替として外国債券やクレジット投資を進めて、利回り確保と運用の多様化に取り組んでいる。

また顧客向けの貯蓄性商品についても、魅力のある商品の提供が難しくなっており、足元の顧客のニーズも外貨建て商品に向かう傾向がある。先行する第一、7月に新商品を投入した日生を追って、明治安田も「外貨建て商品の開発に着手した」(荒谷雅夫常務執行役)とし、住友でも、「外貨建て一時払い保険の販売を検討していく」(古河久人常務執行役員)ことを明らかにしている。

大手も来店型保険ショップに参入

少子高齢化や若年層の保険加入率の低下、ニーズの多様化、企業や家庭でのセキュリティ強化など生保市場の環境は大きく変化しつつある。大手各社とも若年層や女性向けの商品開発・投入に工夫を凝らしているが、現在では大手の主要チャネルである営業職員からの保険購入は5割を切っているという見方がある。既存のチャネルではアクセスが難しい顧客層をいかに取り込むかが大手生保にとっての共通課題となっている。

日生は買収する三井生命とシステムインフラや商品開発を役割分担して、出遅れていた銀行窓販だけでなく、若年層顧客が多い保険ショップを含む乗合代理店にも攻勢をかける方針だ。また第一は、昨年買収したネオファースト生命(旧社名・損保ジャパンDIY生命)を、8月からシンプルで割安な商品を銀行窓販や来店型ショップで提供する会社として本格稼働させている。

大手各社の相次ぐ本格参入で、銀行窓販に続いて、これまで外資系や損保系など新興勢力が独壇場だった保険ショップ市場でも、商品開発、販売競争が激しさを増しそうだ。
 

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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