街角に住む猫には、過酷な運命が待っている ペット界の新王者「猫」を取り巻く光と影<下>

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狂犬病対策で管理が厳しい犬と違い、外にいる猫の生態は把握しにくい。しかし、参考になる数字はある。東京都は政策実施のための情報収集目的で1997、2006、2011年度に猫の飼育実態を調べてきた。飼い主などへのアンケートに加え、無作為抽出した地点で実地調査を行った。

2011年度調査では、同年12月に30カ所で日中に見かけた猫の数と特徴を調査。都内にいる総数は111万匹で、うち屋内限定の飼育86万匹、外にも出す屋外飼育19万匹、飼い主のいない野良猫は6万匹との推計を出した。

ただ、野良猫が徘徊する主要な時間帯は、車や人が少ない早朝や深夜だ。実際の数は6万匹より多いかもしれない。

年度によって数字の変動はあるが、屋内飼育は着実に増えている。理由として都福祉保健局の原口直美・環境衛生事業推進担当課長は「猫を飼えるマンションが増えたのに加え、屋外での感染症や事故などのリスクを防ごうとする意識が高まっているためだ」と説明している。

最大の懸案は子猫の取り扱い

また、2011年度調査では、飼い猫を不妊・去勢しているとの回答率はオス85%、メス86%だった。手術を怠っている間にペットが異常繁殖し、飼い主の手に負えなくなる「多頭飼い崩壊」のリスクが、ある程度は存在していることになる。

翌2012年度に都内で殺処分(病死や事故死も含む)された犬猫は2398匹(成犬186、子犬0、成猫663、子猫1549)。2014年度はそこから半減して1116匹(成犬61、子犬0、成猫376、子猫679)となった。ちなみにピーク時の1983年度には、犬猫合計で5万6400匹を超えていた。

子猫が目立つのは、不妊手術されていない野良猫が外で産み落とすケースが多いからだ。その相手が、去勢されてないまま外に出されている飼い猫である場合もある。

都の動物愛護センターでは、飼い主から引き取りについて相談されると「詳しく事情を聴き、飼育を継続するよう指導している」(栗原八千代・業務係長)が、飼い主不明であれば状況を確認した上で受け入れることになる。引き取り後に病死した場合でも、統計上は注射や炭酸ガスによるのと同じ「殺処分」扱いとなる。

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