米経済の問題は、増税では解決しない 肝心なのは政府支出削減だ--コロンビア大学ビジネススクール校長 グレン・ハバード

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だが、ドッド・フランク法は事態をかえって悪化させる。なぜなら、ドッド・フランク法の下では、指定されたSIFI(システム上重要な金融機関)が存在するからだ。長期的な観点から見ると、SIFIが存在するかぎり、これらの金融機関を公益事業と同様に規制しなければならなくなる。その結果、イノベーションや活力が失われてしまう。

オバマ大統領が失敗を重ねる理由

──多くの有権者が関心を持つテーマとして、失業率の問題がある。

雇用の問題を解決するには、経済を成長させなければならない。ではどうやってそれを実現するか?

第一に、生産性の高い人々に対する限界税率を大幅に引き上げる方針を撤回する必要がある。オバマ政権は、高所得者に対する限界税率の大幅引き上げをアジェンダにしっかりと盛り込んでいる。それに対し、ロムニーの根本方針は、税率を引き下げる一方で課税基盤を広げる、という点にある。エコノミストは皆、大きな成長をもたらすこのアプローチに、賛同するだろう。

第二に、国民が将来の増税を恐れることがないよう、長期的な予算を明確化するべきだ。ロムニーは16年までに、連邦政府の支出にGDPの20%という上限を設ける、と主張している。同時に、社会保障の具体的な改革にも取りかかる。

──つまり、中長期的な財政再建に取り組むことが、成長を生み、雇用の回復につながると。

そのとおりだ。加えて、能力開発と再雇用に焦点を絞る必要がある。ロムニーは最近、労働省の非効率なプログラムの多くを廃止し、これに代えて個人再雇用口座を導入する考えに言及した。これを導入すると、個人に多額の資金を直接支給し、各自は支給された資金を使って教育訓練プログラムを選べるようになる。

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