前職の「顧客データ」使い逮捕!転職時の盲点 「営業秘密」に当たる?必ず3点を確認せよ

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「一般に、不正競争防止法の営業秘密に当たるといえるためには、次の3点が必要と言われています。

(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)

(2)事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)

(3)公然と知られていないこと(非公知性)

先の例で見ると、390件の顧客情報をUSBにコピーした点については、顧客情報は取引において重要な情報であることから(2)有用性は認められ、また、公表されているようなものでもないでしょうから、(3)非公知性も認められたのでしょう。

問題は(1)秘密管理性ですが、おそらくはパスワード設定などによって第三者が簡単に見られないようになっていたり、データ持ち出しについての社内規制が従業員に周知されていたりしたものと思われます。

逆に、いかに顧客情報であっても、社内に管理規則がなく、従業員であれば誰でもアクセスできたような場合には、(1)秘密管理性は否定される方向になりやすいでしょう」

仕事で集めた「名刺」の場合

ところで、仕事で集めた「名刺」は「営業秘密」に当たるのだろうか?

「自らが受け取った名刺の持ち出しであれば、その名刺を会社で一括管理するような場合でもない限り、営業秘密の持ち出しとまでは、通常、言えないのではないかと思います。

先にも述べたとおり、同業種を含め、他社への転職は原則として自由です。しかし、会社の管理するデータの持ち出しは止めるべきでしょう」

鈴木弁護士はこのように指摘した。

鈴木 徳太郎(すずき・とくたろう)弁護士
多摩地区・府中市の弁護士。個人の案件については、相続問題のほか、交通事故や倒産事件を多数取り扱う。近時は労働問題の相談も多い。会社関係の事業承継なども取り扱う。現在、第一東京弁護士会多摩支部副支部長、府中市情報公開・個人情報保護審議会委員を務める。
事務所名:鈴木徳太郎法律事務所

 

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