どうする受動喫煙対策 職場と公共施設以外でも甘えを排し厳しい規制を

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どうする受動喫煙対策 職場と公共施設以外でも甘えを排し厳しい規制を

6月8日、厚生労働省が「がん対策推進基本計画」を公表した。2006年に施行された「がん基本法」に基づき、07年に第1回目の基本計画が策定された。5年ごとの見直し方針により、16年度を目標とした第2次の発表となった。がんによる死亡者の減少と、患者と家族の苦痛の軽減、QOL(生活の質)向上など幅広く盛り込まれた内容で、そのための医療技術・サービスの向上や予防、早期発見のための検診にまで及ぶ細目が挙げられている。この中で、予防の重点項目として比較的大きく扱われているのが受動喫煙を含むたばこ対策だ。

喫煙による肺がん罹患(りかん)率の高さはあらためて書くまでもないが、肺がんのみならず、喫煙が多くのがんや心血管疾患、呼吸器系疾患に重大な影響を及ぼすことは、すでに多くの人の知るところだ。また、喫煙者本人は、高温燃焼を経た煙をさらにフィルターを通して吸うが、副流煙は、低温で燃焼度が低いうえフィルターを通さないため、有毒物質を多く含む。喫煙者本人よりも受動喫煙者の健康被害が大きいのだ。

WHO(世界保健機関)の提唱する「たばこ規制枠組み条約」の批准から8年。国内でも、オフィスや路上、公共施設での分煙は、かなり浸透しているといっていい。たばこの煙が苦手だと口にすると「空気を読めない、身勝手なヤツ」と冷ややかに扱われた一昔前に比べれば隔世の感がある。もちろん、「その席では喫煙しない」というだけで喫煙席からの煙にさらされっぱなしの「名ばかり禁煙席」や、オフィスビル内は全面禁煙となっているものの、ビル外の公開空地に灰皿を置いただけで囲いも空気浄化設備もないものを「喫煙所」と称しているケースも多い。

厚労省の公表では「全面禁煙か喫煙所を設けている事業所が64%になった」とされるが、実態の検証が必要だろう。実際、東京都中央区や港区をはじめとして、路上に灰皿を置いただけの喫煙所はいまだに数多くあり、通行人や近隣のビル入居者はつねにたばこ煙にさらされている。

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