米メリルに巨額の出資 みずほコーポの「真意」

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米メリルに巨額の出資 みずほコーポの「真意」

不振の米大手証券に日本のメガバンクが出資。サブプライムの影響が軽微な邦銀が海外攻勢に出た。
(週刊東洋経済1月26日号より)

巨額のサブプライム関連損失に苦しむ欧米の金融機関に対し、影響が比較的軽微な日本の金融機関が出資に乗り出した。

みずほコーポレート銀行(CB)は15日、米国大手証券のメリルリンチに対し、転換型優先株約1300億円を出資すると発表。みずほCBのほかに韓国とクウェートのソブリン・ウェルス・ファンド(SWF、政府系ファンド)も出資、メリルは約7000億円を調達する。

「欧米金融機関による一連の資本増強の中で、われわれのようなストラテジックパートナー(戦略的投資家)が選ばれたのは初めて」。今回の出資の意義について、みずほCB幹部はそう位置づける。これまで欧米金融機関に出資を決めたのは、シンガポールや中国などのSWFによる「純投資」ばかり。SWFはいわゆる投資先の経営に口出ししない「サイレントな投資家」だ。金融を本業とし、事業提携の可能性があるような金融機関による出資事例は、これまでにはなかった。

みずほの次の動きは

主要取引先である大企業向け融資が伸び悩むみずほCBは近年、国際業務を拡大してきた。昨年1年間は中国や中東ドバイなど海外拠点を相次ぎ開設。「海外収益比率を早期に40%に引き上げる」(別の幹部)ことを目標にしており、今回の出資を機に海外ビジネス展開の足掛かりにしたいところ。メリル出資に当たり、今のところ具体的な提携の話は持ち上がっていないものの、出資を機に事業面でのシナジーをどこまで出せるかがポイントになりそうだ。

みずほCBが出資を発表した同じ日、米シティグループは2007年10~12月期が約1兆円の最終損失になると発表。サブプライムローン関連商品の評価減だけでなく、消費者ローン関連の不良債権処理費用も増加した。欧米金融機関の損失計上は不気味な広がりを見せている。

相次ぐ巨額損失で、欧米金融機関は追加的な資本増強の必要性が高まっている。4月に新頭取に昇格する三菱東京UFJ銀行の永易克典副頭取は16日の会見で「(M&Aなど)ノンオーガニック(=非有機的)戦略を並行して打たないと海外粗利益比率20%は達成できない」と含みのある発言をした。みずほに続く動きが今後注目される。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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