商品再活性化の源泉はデザインの力--「スコッチ メンディングテープ」の場合《それゆけ!カナモリさん》

商品再活性化の源泉はデザインの力--「スコッチ メンディングテープ」の場合《それゆけ!カナモリさん》

 

■市場が消える?!

 「スコッチ(R) メンディングテープ」をご存じだろうか。粘着テープの表面につや消し加工が施され、貼り跡が目立たない。コピーをとってもほとんど影が映らず、テープの表面に文字も書けるという上質なテープのブランドである。

だが、「知っている」という人は圧倒的に40代以上の人が多いはずだ。ナゼなら、パソコンの普及と共に「切り貼り」の文化がなくなり、オフィスでの需要が大きく縮小したからである。バブル崩壊以降の不景気も追い打ちをかけている。単に貼るだけなら安価なテープで事足りる。ユーザーの認知は低下し、需要は細る。市場消失の危機が目の前にあったと言っても過言ではないだろう。  そこで同製品の再活性化のため、スリーエムが打ち出したのが、デザイナー文具への展開だった。このターゲットをどこに置くか。

「昨今、自分で使う道具を(企業や学校から)与えられたモノではなく、自ら買い揃えるという“こだわり”を持った人が増えているのです」。同社の石川由佳・ステーショナリー製品マーケティング部部長はユーザーの変化を指摘する。

市場縮小の中、ユーザーの変化は商機となる。ここで、「企業・学校などの中でこだわりを持った“組織内個人”」、「(将来にわたるユーザー育成を目的として広く)若年層」という2つの戦略ターゲットが設定された。そして、戦略実行の第1弾として10代女性をメインとした商品企画が行われた。

■スリーエムがドーナツを売る?

 商品はまず、2008年に台湾でデザインされた。テープを包み込む親しみやすいリング型でドーナツを模した形状のテープテープディスペンサーである。同国で爆発的な人気となっていたものを持ち込み、日本のマーケティングチームで、「スコッチ(R) メンディングテープ ドーナツ」(冒頭の写真左)という名称を決め、よりドーナツらしい色やパッケージにブラッシュアップして08年12月に上市したところ、たちまち店頭で在庫切れを起こす人気商品となった。

そこでさらに、2010年8月には「スコッチ(R) メンディングテープ リングドーナツ」」(同写真右)として新しいシェイプのシリーズを展開した。こちらの商品は、「テープをはめる部分に溝を付け、住友スリーエム製の詰め替えテープしか使えないようにした。第1世代で95%だった詰め替え用での同社テープの利用を100%に引き上げる」(2010年10月1日付 日経産業新聞 「デザインここで勝負 住友スリーエム」)

ドーナツといえば、“ミスド”(ミスタードーナツ)である。同店で大規模なコラボレーションの販促が行われた。店頭での陳列に加えて、景品としてサンプリングを行ったのである。また、「ドーナツデコレーションコンテスト」をネットで開催したり、「東京ガールズコレクション」でサンプリングするなど、同社としては異例の販促活動も多数展開。これによって、戦略ターゲット内の認知・使用率をアップさせることに成功した。「ドーナツ型容器の登場で、10~20代の女性の認知度は発売直後の8%から09年9月で35%に向上した」(2010年10月1日付 日経産業新聞 「デザインここで勝負 住友スリーエム」)という。

ドーナツ型からの学びは「エモーショナルなコミュニケーション」の重要性だった。そこで第2弾の商品を展開すべく、フィリップ・レフュアー氏が住友スリーエム初のデザインマネージャーとして担当に就いた「感性に訴える。使う楽しみ。User Experienceというものをカタチにしたかったんだ」と同氏は語る。

 

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