【産業天気図・12年4月~13年3月】震災や洪水影響消える反動増で回復の年、スマホ普及が追い風の通信など年間「晴れ」は10業種

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 東北の震災被害やタイの洪水の影響を受けた日本の産業界は、自動車の挽回生産も進み、下期には震災復興需要が本格化し、中国経済の再加速も期待がかかる--『会社四季報』担当記者の業界景況感予想はそう総括できそうだ。

 今回の予想で対象となった35業種のうち、12年4~9月期が「晴れ」(主要各社が前年同期比で増益)なのは16業種。自動車など前期に東日本大震災の影響でサプライチェーンが大きく乱れた主力業種も含まれ、世界経済全般に懸念要素はあるものの産業界回復の年となりそうだ。

 「晴れ」業種の数は10月以降に14業種に減る。震災影響の反動増がなくなるためだが、欧州債務問題と円高定着の懸念材料もあるが、雨は電力・ガスのみで、全体的にまずまずの水準となりそうだ。

 年度を通じて「晴れ」が続きそうなのが、自動車、情報通信や商社、重電など10業種。自動車は上期にエコカー補助金効果、下期に新車の切り替え時期到来で好調が続きそう。情報通信は、基本契約料が割高なスマホ普及が追い風。総合商社は、資源価格の下落はマイナス要因だが、非資源分野を伸ばし増益を確保しそうだ。

 2012年4~9月の前半と、12年10~13年3月の後半とを比較した場合、前半より後半の景況感が上向くと見込まれているのは5業種。晴れに改善するのは、建設機械、化学、精密、電子部品。ともに「曇り」から「晴れ」への改善だ。建機は中国要因が大きく、昨年からの低迷が長引いているが、後半には調整期を脱しそう。化学は、液晶パネルや半導体の在庫調整が底打つ。タイの洪水影響が大きかった電子部品と精密も下期にかけ業績が好転しそうだ。鉄鋼は今期に大幅な増益が見込まれ、曇りから晴れへの改善も期待されるが、足元の円高が続けば、鋼材の価格交渉は難航しそう。アジア市況も足元は底打ちしているが、予断を許さない状況だ。増益要因としては10月に複数の大型再編を予定する特殊要因も大きい。家電・AVは「雨」から「曇り」へ改善。テレビ中心に需要は低水準が続きそうだが、大手各社のリストラ効果の発現が見込まれる。

 だが、こうした上向きのムードを味わえない業界も多い。反動増の一服が予想される工作機械や外食など。紙・パルプでは、値上げが浸透する前半は増益基調だが、後半は効果が一巡する。

 全体としては「曇り」業種が多い。年間通して「雨」が続く電力・ガスなどがある一方、最高の景況感である「快晴」(業界全体が増益)の業界は引き続き皆無の状況だ。 

 震災直後の谷は早期に脱却でき、タイ洪水影響もひと段落した。ただ、欧州の債務危機は引き続きくすぶっており、一服感のあった円高も進行、日経平均株価は9000円を割り込んだ。輸出産業中心に今期に懸念材料も増えている。中国経済の調整も長引いているだけに、景気の先行きは国内で明るさをみせている一方、外需は引き続き懸念が多いようだ。

>>>次ページに主要業種の天気予報図
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