私たちは“99%”だ ドキュメント ウォール街を占拠せよ 『オキュパイ!ガゼット』編集部編/肥田美佐子訳 ~米国の既成の政治に根深い不信感

私たちは“99%”だ ドキュメント ウォール街を占拠せよ 『オキュパイ!ガゼット』編集部編/肥田美佐子訳 ~米国の既成の政治に根深い不信感

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

 オバマ政権発足後、期せずして二つの大きな市民運動が起こった。一つは2009年春にシカゴやポートランドで自然発生的に始まったティーパーティ運動。もう一つは、11年9月にニューヨーク市のリバティ公園の占拠から始まり、全米に広がっていったウォールストリート占拠運動である。

興味深いのは、ティーパーティ運動は減税と小さな政府を要求する保守派の運動であるのに対して、ウォールストリート占拠運動は、資本主義を批判し貧富の格差是正を求めるリベラル派の運動であり、まったく主張を異にしていることだ。共通点は、政治エスタブリッシュメントに対して根深い不信感を抱いていることである。

ティーパーティ運動はすでに政治的な影響力を確立し、共和党をより過激で保守的な方向へと導いてきた。と同時に、現在、共和党の既存組織に取り込まれつつある。これに対してウォールストリート占拠運動の先行きはまだ見えてこない。伝統的なリベラル派との関係も明確ではない。むしろ運動が過激さを増すに従って、伝統的なリベラル派から乖離し始めている感がある。ちなみに本書のタイトル『私たちは“99%”だ』は、米国社会の貧富の格差を示すスローガンで、同運動の別名でもある。

同運動の情報は日本には断片的にしか紹介されていないが、米国では多くの関連本、類書が出版されている。本書はそうした一冊で、その特徴は運動にさまざまな形でかかわっている人々の手記をまとめたところにある。内容は臨場感に富み、運動に参加した若者たちが何を感じ、何を考えているのかを知るには格好の本になっている。

ただ、同運動の思想的、歴史的な評価を下すには、今は時期尚早で、また本書にそうした内容を期待するのは無理である。

Editors of “Occupy! Gazette”
『オキュパイ!ガゼット』は、2011年10月から月刊で発行されている大判新聞サイズ40ページ立ての出版物。編集は、政治・文学・カルチャー雑誌『n+l』の編集者が担当。その3号までの記事を基に本書は構成された。最新内容はウェブサイトで見られる。

岩波書店 2100円 246ページ

  

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