中国の機械工業の挑戦に対し、日・独は真剣に対応を--トーマス・リンドナー ドイツ機械工業連盟会長

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国内にとどまって競争力を失うよりは海外移転を選ぶ

製造業の海外移転による産業空洞化は難しいテーマだ。だが、ドイツでは、海外移転により移転先に雇用が生まれることで、ドイツ国内にも雇用が創出されると考えられている。海外に移転する工程は、基本的には付加価値の高くない分野だ。基幹技術や設計、品質管理などの機能はドイツ国内に残る。したがって、海外に生産拠点を移したからといってドイツ国内の仕事が全部なくなるとはみられていない。国内にとどまって競争力を失うより、海外に出たほうがいいという風潮が強い。

VDMAの傘下には3100社の企業があるが、平均従業員数は160人で、会員企業の中には中小企業が多く含まれる。こうした中堅企業では、ひとりのオーナーが、開発、経営、営業、財務など、複数の部門のトップを兼ねており、急速な海外展開は難しい状況だ。こうした企業は、協力や提携関係を活用し、コア事業に特化しながら海外展開を進めていくことが重要だろう。 

部品加工を海外に委託し、国内でアッセンブルのみを行う動きは、ユーロ以前、ドイツ・マルクの時代からあった。このことが技術の流出につながるのではないか、という懸念はあるが、そればかりを気にする必要はない。技術を守ることのできるような国(移転先)もある。大切なことは、技術を守るために海外での人材を育成し、(従業員に)忠誠心を持ってもらうことだ。

日本とEUの間で自由貿易協定が結ばれることには賛成だ。ただ、機械にかかる関税はすでに低く、影響は小さい。機械製造分野のドイツ企業は対日輸出において、関税による障壁は原則的にない。であるにもかかわらず、ドイツ企業の日本における市場シェアは、日本企業のドイツにおける市場シェアの2分の1しかない。外国製品が日本に受け入れられるためにどうすればいいのか。それを考えることがわれわれの現在の課題だ。
(小河眞与 =東洋経済オンライン)

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