原発を今、止めてしまっては日本の社会生活が立ちゆかない--野田首相が原発再稼働に向け会見

原発を今、止めてしまっては日本の社会生活が立ちゆかない--野田首相が原発再稼働に向け会見

「国民の生活を守るには再起動するというのが私の判断」。
 
 関西電力の大飯原子力発電所3、4号機の再稼働をめぐって、野田佳彦首相は8日夕刻、記者会見を開いて再稼働に関する国民への理解を求めた。今後、大飯原発が立地する福井県やおおい町の判断を待って、早ければ来週中にも政府による最終的な再稼働判断を下すと見られている。

再稼働の判断をめぐっては4月以降、野田首相や枝野幸男経済産業相など4大臣が、原発の安全性と必要性について議論を重ねた後、地元自治体へ理解を求める取り組みを進めてきた。5月30日には関西2府5県などで構成する関西広域連合が「限定的」などの条件付きで、従来の姿勢から一転して再稼働を事実上容認する声明を発表。ただ、原発が立地する福井県と、滋賀県や京都府など周辺自治体では再稼働に対して温度差があり、福井県側が野田首相に国民への再稼働必要性を説明するよう求めていた。

政府では連休後、「必要性」に関する関西での電力需給について有識者会議を立ち上げ、検証を実施。2010年並みの猛暑が襲った場合、原発がまったく止まった状態だと関西では約15%の供給不足に陥るとの見通しが示された。

これに対して、野田首相は「数%程度の節電であれば、みんなの努力で何とか出来るかもしれない。しかし、関西での10%超の需給ギャップは昨年の東日本でも体験しなかった水準で、現実的には極めて厳しいハードル。仮に計画停電を余儀なくされ突発的な停電が起これば、命の危険にさらされる人や仕事が成り立たなくなる人もいる。働く場がなくなる人もいる」と危機感を示した。

「必要性」に加えて、「安全性」が担保されていることも改めて強調。「これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても炉心損傷に至らないことが確認をされている。これまで1年以上の時間をかえIAEAや原子力安全委員会を含め、専門家による40回以上にわたる公開の議論を通じて得られた知見を慎重には慎重を重ねて練り上げ、安全性を確かめた」と説明した。

もっとも、今回の原発再稼働を決めた安全基準はあくまで暫定的なものとしており、今後新たに発足を目指す規制機関のもとで改めて判断するとした。

さらに、会見では今回の判断が「夏場限定」でないことも明言。関西広域連合に属する地自体首長からは「あくまで夏場限定」を求める声が出ているが、野田首相は「計画停電や電力料金の高騰による日常生活や経済活動への影響は夏場に限ったことではない」と説明。

「(原発の代替燃料である)化石燃料への依存を増やして電力価格が高騰すれば、ギリギリの経営をしている小売店や中小企業、そして過程にも影響が及ぶ。空洞化を加速して、雇用の場が失われる。そのため、夏の限定の再稼働では国民の生活は守れない」とした。

再稼働判断をめぐっては、政府が判断する前の段階である、原子力安全保安院の意見聴取会で再稼働に反対する委員が会議を欠席したり、その後の原子力安全委員会でも反対する市民らが押し寄せてろう城したりと、これまで波乱続き。
 
 また、国会事故調査委員会により、福島第一原発事故の検証が目下行われていることもあり、「事故の原因もわかっていない段階で原発の安全性が担保できるとは思えない」(原子力技術者)との声も根強い。

こうした中、政府が原発再稼働を強硬に推し進めることに対しては、「福島第一原発事故がいまだ収束していないのに、再稼働するなど考えられない。原発を『負の遺産』にしたくない、という人たちの力が働いているのではないか」(原発被害にあった自治体の首長)と批判も出ている。

(倉沢美左 =東洋経済オンライン) ※写真は3月、撮影:日本雑誌協会

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