「グダグダなプレゼン」に陥る日本人の共通項 その文化が生んだ5つの呪縛を理解せよ

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もちろん会社組織での上下関係は、日本国内でも会社によって程度の差は異なるでしょうし、海外でも、日本以上に厳しい国だってあります。ただ、いずれにしても筆者は、もっと子どものうち、若いうちから、自由に、そして臨機応変に発言できるような風通しのよさを学校でも職場でも担保できれば、対外的にももっとうまく立ち回れる人材が育つのにと思うのです。

教育現場では弱点克服に向けた取り組みが始動している

教育現場においては、学校での講義スタイルを克服して子どもたちの活発な発言を促すアクティブラーニングの導入を文科省が推し進めており、それと合わせる形で大学入試改革も行われるなど、日本人の弱点克服に向けた取り組みが始動しています。筆者自身、小中学校などへ出前授業に赴いて感じるのは、小学校低学年では大人に向かって自由に発言する子も多い一方、高学年くらいからは、上下関係や正解を意識するような「社会化」を背負い、一部の生徒・児童を除いて発言量が格段に減るという点です。

学校や職場での風通しをよくすることができるか否か? これには「上」に立つ人間の度量と能力が問われます。自由に臨機応変に発言する機会が増えれば、プレゼン本番はもちろん、その後の質疑応答の時間でも、急に振られた質問にうまく対処できるなど、頭の使い方が変化し、グダグダなプレゼンからの脱却を図る一助になると思います。

その②「日本的資料」の呪縛

「日本的資料」。これは何かと申しますと、手に取るだけで、コンセンサスを得るまでの長い会議、煩雑な稟議手続き、その上に押された数々の印鑑の重さがずしーんと響く、関係者の血と汗と涙がにじんだ「資料」を指します。当然、ここまで重みのある資料には、新たな議論の余地があってはいけないわけです。この日本的資料も、呪縛のひとつです。

よく会議やプレゼンの場で、「このスライドは、ワード文書の資料をコピペしてちょっとフォントを上げただけなのでは?」と思うようなスライドを見ることがあります。このイケてないスライド量産の原因は、「プレゼンでのスライドの作り方」などを習わないまま大人になってしまったからであろうか、と筆者は勝手に思い込んでいたのですが、どうやら「これが決定された事項だから、それを寸分違わず再現しなければならないんだ」という背景が多いようなのです。なるほど……お気持ちはとてもよくわかります。

でもこれでは、本来「聴く」はずの聴衆が「手元資料を読む」のに忙しく、プレゼンスピーカーの声はバックに流れるBGM化してしまいかねません。目を細めないと読み切れないような資料は最後に配ることにして、まずは話を聞いて議論をする場を作るための最低限の内容を投影してみるのが得策ではないでしょうか。

無理してインスピレーションを喚起するような写真や概念図などを使ったスライドを創造する必要はありません。出席者がひたすら文字を追うのではなく、出席者同士の対話・意見交換・議論が進むような項目出しやポンチ絵はいかがでしょうか。「日本的資料」をいまさら読みほぐすような機会をつくっても、もはやそこには新たな議論の余地がないのでしょうから。

次ページでは3つ目、4つ目は?
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