好調な京セラがあえて"下方修正"をした理由 構造改革のメスはどこに入るのか

拡大
縮小

それぞれ技術的には定評はあるが、中国や台湾メーカーによる価格攻勢が激しく、収益性は厳しい環境にある。

この2事業には、過去にも改革のメスが入っている。京セラは2013年度に電子デバイス関連事業で約50億円をかけて構造改革を断行。その際には民生用タッチパネルの生産縮小や資産評価の見直し、拠点の集約を行った。

過去幾度となく繰り返されてきた"構造改革"

世界でもトップシェアを誇る水晶デバイスも改革の対象になりそうだ

ただ、それで事態が終息したわけではないようだ。

2014年度、水晶部品事業を統括する、京セラクリスタルデバイスは営業損失24億円を計上。ディスプレイ事業を担当する京セラディスプレイも同じく51億円の営業損失を垂れ流している。

京セラも手をこまぬいていたわけではない。今期に入ってから、水晶部品事業ではスマホ向けの拡販を進め、ディスプレイ事業も車載向けなど業務用の製品開発に注力してきた。

この点に関して、京セラ側は「電子デバイス事業のどこで構造改革を行うのかについて、詳しいことは言えない。ただ、水晶部品とディスプレイの2事業の改善がまだ途上というのは事実」(広報)と説明する。抜本的な改善を図り、今回さらなる構造改革を決断したとしても不思議ではない。

スマホ向け市場の拡大と円安により、ここ数年絶好の環境下にある電子部品業界。だが、京セラは2014年度に通信機器事業と太陽電池事業で、今年は電子デバイス事業でと、度重なる構造改革を強いられ”勝ち組”になりきれないでいる。今度こそウミを出し切り、本来持っている収益力を取り戻す事ができるのか。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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