サステナブル経営

社会的課題の解決が企業価値の向上につながる

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世界の変容がますます加速する一方で、商品やサービスのライフサイクルはますます短くなっている。だがそうした中でも社会的責任を果たしながら新たな需要や市場を掘り起こし、サステナブル経営を実現している企業はある。そしてそうした企業の多くは、CSRとして社会的課題の解決に真剣に取り組んでいる。企業はどのような社会的課題に直面しているのか。未来を先取りするサステナブル経営は可能なのか。三菱総合研究所の小宮山宏理事長に語っていただいた。
三菱総合研究所 理事長 プラチナ構想ネットワーク会長
小宮山 宏

Hiroshi KOMIYAMA 1944年生まれ。67年東京大学工学部化学工学科卒業。72年同大学大学院工学系研究科博士課程終了。88年東京大学工学部教授、2000年工学部長、大学院工学系研究科長、03年副学長などを経て、05年4月第28代総長に就任。09年3月に総長退任後、同年4月から現職

課題解決が新たなビジネスを創出する

今から1000年ほど前、人間の平均寿命は24~25歳でした。しかしそういう時代でも、シーザーは暗殺された56歳まで生きました。プラトンやアルキメデスはもっと長生きしました。きちんと食べることのできる特権階級は十分長く生きることができたわけです。逆に言えば、きちんと食べられないこと、飢えや飢饉が社会的課題だった時代でした。

しかし現在は、世界中の多くの人がきちんと食べられるようになりました。世界の平均寿命は70歳を超え、先進国では80歳くらいに達しています。今の時代は、飢えや飢饉ではなく、その逆の飽食や肥満、高齢化などが社会的課題になっています。温暖化や地球環境問題も重要な社会的課題です。社会的課題が多様化し、そして誰の目にも明らかになってきています。

そうした社会的課題に企業もきちんと対応しなければ、サステナブルではない、今はそういう時代に入っていると私は考えています。ただし、そのことに気が付いていない企業もまだ多いのが現実です。

社会的課題は、ビジネスにとってはニーズです。社会的課題にきちんと対応し、早期に解決していくことで、新たな需要、新たな経済活動、新たな産業を創出していくことができます。そういう意味では社会的課題をいち早くとらえ、課題解決に真剣に取り組むことは、企業にとって生き残るために必要なことなのです。CSRというと、少し前は仕方なくやるという企業もたくさんありましたが、社会的課題にきちんと向き合い、解決することこそ企業価値を高めていくのです。CSRに取り組み、社会的課題に対応していかないと社員のモチベーションも上がらないし、IRもうまくいかない。そう考える企業が徐々に増えてきています。

健康や自立支援が巨大産業になる

1970年ごろ、日本では次に経済を引っ張る3種の神器は何かということが盛んに議論されました。しかし結局、新しい3種の神器は出てきませんでした。もう欲しいものがなくなっていたからです。先進国は、物量的には明らかに飽和状態です。だから先進国はゼロ成長か、せいぜい1~2%の経済成長しかできないのです。

では、たとえば中国はどうでしょうか。

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