高級ホテル、お客様、一休の三方よしのビジネスモデル--森正文・一休社長(第1回)

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しかし、急に10人キャンセルになったりと必ず空室が出る。あるホテルの担当者がこう言っていました。「銀座の最高級の寿司屋は2万円のナマモノを扱っているが、おそらく売れ残ったトロはその日に捨てず冷蔵庫に入れて翌日のランチに出しているはず。それと違ってホテルの部屋は今日買ってもらえないと明日は売れない。冷蔵庫のない5万円もする最高級ナマモノなんだ」と。

一休のサイトはそんな安定しないホテルの事情に非常にマッチしているんです。たとえば、福島第一原発事故が起きた後、外国人客が減ってホテルはパニックになりましたが、その空室分を日本人向けに安く売ることができた。一休のサイトを利用すれば稼働率の変動によって単価を変えることができるんです。コミッションもJTBの半分ですからホテルにとって使い勝手がいい。

また、ネットでは代金決済のトラブルがよく起こりますが、後払いなのでホテルも当社もリスクがありません。まずホテルが代金を最初に現地もしくはクレジットカードで回収する。翌月ちゃんとお客様が来たかどうかをホテルと照合し、10%の手数料をホテルにお支払いいただくことになっています。

高級路線に特化しているからお客様も利用しやすい。言い方はきついですが、われわれが競合する「楽天トラベル」や「じゃらんnet」が量販店なら、一休のサイトは表参道や銀座のブランド店。プレゼントのネクタイを探すなら、量販店ではなくブランド店で比較して探したいですよね。ホテルも同じです。

みなさん8000円くらいのホテルやビジネスホテルだと、どこに泊まるか選ぶのにも力を入れませんが、結婚記念日などで2万円以上の高級ホテルを利用する場合は、できるだけ情報を集めようと気合いが入ります。当然、高級路線に特化したサイトのほうが比較しやすい。
 
 食事やお風呂、眺めやベッドなどお客様が求めるスペックは細かいですが、一休はそれに応えるだけの多様なプランを取りそろえているので、お客様が多く集まってくるんです。11年度末で、会員は260万人を突破しました。

でも、僕はスーパーアバウト人間ですから、このビジネスモデルを緻密に考え抜いたわけではないんですよね。偶然に出来上がったんです。

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