サーティワンアイス、40年ぶり赤字のピンチ 異業種ライバルのコンビニに客を食われる

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 売上高が縮小する中、B-R サーティワンアイスクリームにとってさらに打撃となるのが、コストの増加だ。

まず、海外から輸入するアーモンドやフレーバーといった添加原料が、為替の円安を受けて上昇している。同社の場合、海外から輸入する原料は、全体の30%程度を占める。さらには国内の酪農家減少に伴う、構造的な供給減も影響。酪農家の戸数は、2015年の全国飼養戸数が前年比4.8%減の1万7700戸と、さかのぼれる範囲で19年連続減少中だ。1996年と比べ、その数は、実に約4割まで減少している(一般社団法人Jミルク調べ)。これによって、クリームミルクや脱脂粉乳といった、主原料の価格も上昇している。

原料価格の上昇は、アイスクリーム業界全体に与える影響だが、同社固有の誤算も見逃せない。2015年4月に稼働した第2の生産拠点、神戸三木工場の稼働率が思うように上がらず、償却負担が重くのしかかっている。同工場の稼働は、最高益を更新した4~5年前に決定した事案だが、市場環境の変化で目算が大きく狂ってしまった。

「キューブナイン」で巻き返しなるか

こちらがキューブナイン

巻き返しに向けて、同社も手を打っていないわけではない。目玉となりそうなのが、2015年12月に発売を予定する、アイスクリームケーキ「CUBE9(キューブナイン)」。単価は税込み4300円から(店舗によって価格は異なる)に設定しており、販売が伸びれば、業績への貢献度が大きい。

ただ、キューブナインは当初7月に発売する予定だったところ、成形に問題があり、発売時期が12月にずれ込んだ。これによって、当初、実施する予定だったキューブナイン単体でのテレビCMを取りやめることになったことは、気がかりだ。

たとえ天候不順が一巡し、一時的に業績が浮上したとしても、当面は低調な販売トレンドが予想される。主原料の仕入れ価格上昇や償却負担の発生も、継続的にダメージとなろう。子どもたちをはじめ、幅広い層に支持されてきたサーティワンアイス。コンビニというかつて異業種だった存在と、互角に戦うことができるのか。かつてない苦境を迎えていることは間違いない。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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