3日の仕事が5分に?トヨタの「超段取り術」 仕事が速い人はここが違う!

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段取り替え短縮の効果

トヨタ自動車のあるプレス工程では、1960年代後半に3日かかっていた段取り替えを、1970年後半には5分に、さらにその後は機械化を行い80秒にまで短縮しました。実に、3000分の1です。背景には、ニーズの多様化と車全体の需要増がありました。つまり、多品種生産を行うための段取り替え回数が増える中、生産量の増加も求められるという、相反する2つのニーズがあったのです。これを両立させる重要な要素が、段取り替え時間の短縮でした。

段取り替えの時間短縮のポイントは、大きく2つ。1つは、ムダや調整作業の排除。先ほどのプレス工程の事例では、経験と勘を頼りに、ベテランが紙1枚の薄さの精度まで設備調整をしていました。さらに、ベテランであっても、その調整には長い時間がかかっていました。そこで、ベテランが持つ知見を数値などで定量的に把握して「見える化」することで毎回の調整作業をなくし、誰でもムリなく短時間でできる作業にしたのです。

もう1つは、スケジュールの並行化。つまり、段取り替えの本番以外のタイミングでもその作業を適宜行うことで、本番の時間を短縮したのです。このように、特定の人が本番のみでやる作業から、複数の人が本番以外でも準備作業をする体制にすることで、本番の時間短縮を図っていきました。

段取りには「内段取り」と「外段取り」がある

さて、ここからは具体的な手順をみていきます。

最初のステップでは、作業を「内段取り」と「外段取り」に分けます。「内段取り」とは、その人・その場・その時でのみできる仕事です。

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制約が大きい「内段取り」を短縮することが重要

たとえばシチューを作る場合であれば、材料を煮込む・味付けをするなどが該当します。これらは、具体的に料理する段階にならないとできません。

一方の「外段取り」とは、その人・その場・その時以外でもできる仕事です。先ほどの例では、必要な材料を買いに行くことが該当します。これは、事前に、家族にお願いすることができますね。

生産性の向上のためには、まずは人・場所・時間などの制約が大きい「内段取り」を最短にすることが重要です。

次ページ「内段取り」「外段取り」の混同が問題を生む
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