歩み寄った台湾総統、波紋呼ぶ「1つの中国」 交錯する中台の思惑はどこへ向かうのか

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シンガポールで開かれた中台首脳会談。右手前が中国の習主席、左手前が台湾の馬総統(写真:新華社/アフロ)

馬英九による馬英九のための会談──。11月7日にシンガポールで行われた初の中台首脳会談は、この程度の評価になりそうだ。

台湾の馬英九総統にとっては、非常に満足のいく会談だっただろう。1時間の会談後に開いた記者会見でも終始、上機嫌だった。中国トップとの会談は彼の執念であり、2008年の総統就任前から何度も対話を呼びかけていた。

中国側が受け入れた理由

中国の習近平国家主席にも、馬総統の執念を受け入れる素地はあった。「92共識(92コンセンサス)」である。

これは「1つの中国、各自解釈」とされ、中台を「1つの中国と認識し、その認識は自分たちの解釈に任せる」というものだ。1992年、中台交流窓口機関の実務者同士が初めて香港で会った際、口頭で合意したとされる。

台湾の分離・独立を絶対に認めない中国は、李登輝、陳水扁の両総統時代に打ち出された、「台湾は中国と別」という趣旨の発言に対し反発。中台対話が断絶した過去がある。だからこそ、92共識にある「1つの中国」という文言に飛びついた。

台湾政府が発表した会談記録の中には「92共識」という単語が何回も現れ、習主席も「1つの中国」とはっきり言及している。「世界に向けて『92共識は1つの中国を認めるもの』としてアピールされた。中国にとっては、これが最大の収穫だろう」(中華経済研究院の張栄豊研究員)。

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