新日鉄住金を苦しめる、中国の「出血輸出」 「異常なマージン低下」が日本でも起きている

拡大
縮小

減額要因には原料安に伴う在庫評価損の拡大もある。これも結局は中国の需要減の影響が大きい。付加価値の高いシームレス鋼管など、エネルギー向け鋼材需要の減退を招いた原油安も、広い意味で中国の減速が関係する。中国に翻弄された決算といえる。

輸出比率が47%台と高いJFEホールディングスも、通期の経常利益予想を、7月時点の2000億円から1000億円(前期比57%減)へ再修正。「これまでもアジア通貨危機やリーマンショックなど厳しい調整局面はあったが、今回は、世界の粗鋼生産の半分を占める中国での景気減速と供給過多が原因であり、構図はまったく違う」と、岡田伸一副社長は指摘する。

一方、電炉各社については、東京製鉄など、増益幅を拡大させる企業も多い。輸出比率が低く、円安で外国製品の輸入もさほど増えていないのと同時に、原料の鉄スクラップ価格が販価以上に急落し、利幅が改善したためだ。

中国企業もこのままではもたない

スクラップ下落も結局、中国の需要減が主因。「中国が非関税の鋼材半製品の安値輸出を増やし、海外電炉メーカーが購入していることも、スクラップ価格下落に拍車をかけている」(業界幹部)。

問題は中国の安値輸出が今後どうなるかだ。米国などで反ダンピング調査が広がり、中国製品が標的となりつつある。これが数量や価格の是正につながるとの期待はある。

中国鋼鉄工業協会(CISA)に加盟する、主要100社の今年1〜8月の損益は約3600億円の赤字。特に7月以降、収支は急激に悪化している。今の市況では中国企業自身ももたない。

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