自転車保険「あえて加入しない」のも賢い選択 条例義務付けに慌てず、冷静に自己分析せよ

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事故を起こすと、ケガをさせても物を壊しても被害者への対応を行わなくてはならなくなる。もちろん誠意を持って対応していくことが当たり前だが、こと補償となると相手との交渉事項も多く、精神的にも滅入ってしまうのが正直なところだ。

プロにお任せ、保険会社による示談代行サービス

こんな時、自転車保険にせよ個人賠償責任保険にせよ加入していると使えるサービスがある。それが保険会社による示談代行サービスだ。あなたに代わって保険会社の担当者が被害者との示談交渉を代行してくれる。

示談代行は精神的負担を大幅に軽減させるだけでなく、プロによる示談交渉で早期の解決が期待できることからもこれだけでも保険に加入するメリットがあるといえるだろう。ただし示談代行サービスは保険ごとに異なるので、自分の保険に示談代行サービスが付いているかについては確認しておくことが大切だ。

気をつけたいことはまだある。自転車保険では自転車の盗難は保障されない、ということである。自転車保険は相手への補償と自分のケガへの保障なので、駅やお店の駐輪場で自転車が盗まれても保険金は払われないので注意したい。

では自転車の盗難は保障できないかというとそういうわけではない。自転車の盗難を保障する制度や保険が、自転車メーカー、販売店、さらには少額短期保険で用意されているので、ニーズに応じて加入すればいいだろう。

自転車の盗難についても知っておきたいことがある。自宅で盗難にあった場合、火災保険に加入していれば家財として保障の対象になるかもしれないということである。

ただし、自宅内とはいえ、軒下であったり屋根付きの駐輪スペースであったりしないと保障の対象にならないなど、条件は厳しいので、こちらも疑問があれば自分が加入している保険会社や保険代理店に確認しておくといいだろう。

誤解がないようにしたいのは、「自転車保険に加入しなくていい」ということではなく、同じ補償・保障内容が重複することによる無駄をなくそうということである。

高額賠償となる可能性が高い現代においては万一の時の補償がない状態で自転車を運転することは人生を賭けて乗っているといっても過言ではないくらい危ないことだ。万一の時にも自分や家族、さらには被害者を守ることができる。これこそ行政が条例を施行してでも自転車保険に加入させたい理由の本質のはずである。

ぜひ自分や家族が自転車ユーザーである読者には少しでも早く自分の補償能力を把握してもらいたい。そこからが本当に安心できる自転車ライフのはじまりなのかもしれない。

木村 博史 クリエイティブ・ディレクター

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きむら ひろふみ / Hiroshi Kimura

龍谷大学法学部卒業後、損害保険会社にて保険引受業務、自動車保険開発業務に従事。現在は広告制作会社インプリメント株式会社取締役社長兼クリエイティブ・ディレクター。取引先は企業規模や業種を問わず多岐にわたるが、独立後も多くの保険会社や共済にて募集ツール、映像制作など様々な面から保険に携わる。著書『人を動かす言葉の仕組み』(KADOKAWA)、『YouTube成功の実践法則53』(ソーテック社)

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