乱気流のJAL--新計画めぐり渦巻く思惑

乱気流のJAL--新計画めぐり渦巻く思惑

日本航空は3月に中期経営計画を改定し、1500億円規模の大型増資にも踏み切る公算だ。金融支援色の排除に必死だが、事業会社を巻き込み新たな混乱も予想される。
(週刊東洋経済1月26日号より)

 再建を進める日本航空(JAL)が策定中の新中期経営計画の全容が見えてきた。大規模な資本増強や事業再編を検討。足元の業績に回復の兆しが出る中、これまでのような金融支援色は極力排除したい考え。大手商社なども巻き込む算段だが、事態は複雑な様相も呈する。

 2008年3月期は、営業利益が当初計画を130億円上回る前年度比倍増の480億円の達成が視野に入る。地上職の部長や次課長級社員のリストラなどで波乱が予想された人件費の500億円削減計画も進んだ。

 それでも財務面の不安は大きい。有利子負債はリース債務などを合わせ約1.5兆円に達し、自己資本比率も15%程度で全日本空輸の半分程度と脆弱。「テロなど突発事態があれば、今の資本では薄い」とJALの西松遙社長は言明。1500億円規模の資本増強の必要性を示す。

 ただ、06年に既存株主から批判された公募増資は難しい。昨年には債務株式化も浮上したが、銀行による救済色が強いことに社内から不満が続出して断念。そこで中計には、残る選択肢の優先株発行を盛り込む算段だ。が、大手金融機関は昨年中にJALの債務者区分を「破綻懸念先」に引き下げており、簡単には増資要請に応じにくい。

商社に軒並み要請

 そこで白羽の矢が立ったのが、業績好調で資金力もある大手商社や石油会社など取引先だ。特に商社は増資要請に応じる構え。航空需要が高まる中でJALとの接点拡大を機に、航空産業という巨大利権を狙う思惑が垣間見える。

 三菱商事は昨年11月、航空機への動力供給などを手掛けるジャスダック上場のエージーピー株約27%をJALから約13億円で取得した。同社事業との相乗効果は少なく、関係者は「再建を図るJALを助ける意味もあるはず」とささやく。同じグループの三菱重工業の存在を指摘する声も多い。「重工が巨額を投じる日本初の小型ジェット旅客機・MRJの受け皿は大きな課題。JALは最重要顧客」(関係者)という。

 また、MRJのライバル機であるカナダ・ボンバルディア社の代理店を務める双日、JALが昨年購入を決めたブラジル・エンブラエル社の代理店である丸紅など複数社に増資を要請しているようだ。

 ボーイングの代理店も務める双日はJALから有力子会社JALUX株を譲り受けた実績もある。その一方で三井物産は欧エアバスの輸入代理店。JALの機材はこれまでボーイング一辺倒だが、「物産は増資引き受けを機にエアバスの販売攻勢を狙っている」と同業他社は指摘する。

 2年後には羽田空港拡張で運航の多頻度小型化が本格化。JALは大手商社に軒並み100億~200億円規模で増資要請する方向だが、水面下での主導権争いもあり、今後の取引拡大などで混乱する可能性は十分にありうる。

 現行の中計で掲げる航空事業への経営資源の集中で事業売却も加速の方向だ。有力候補のJALカードは三菱UFJフィナンシャル・グループに落ち着きそうだ。ただ、子会社群はなおも約250社に上り、コスト削減の足かせとなっている。特殊な事業が多く売却先確保が難しいこともあり、ここでも受け皿には商社をもくろんでいるようだ。赤字が続く貨物部門は本体や関連会社を統合して新会社を設立、商社からの出資などで経営再建に取り組む方向だ。

 が、JAL社内には自力再建に懸ける思いも根強く、リストラ加速への反発は大きい。当初は2月の予定だった新中計発表も3月にずれ込む。労働組合はリストラに疲弊し、経営陣は業績回復で緊張が緩み始めたとも指摘される。「破綻懸念先企業」の自力再建は本当になるのか。
(週刊東洋経済:冨岡 耕記者)

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