アナタが知らない「駅のホーム」の危険な世界 盲学校の歩行指導に同行したら見えたこと

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レールとレールの間にうつ伏せになった生徒の上を“列車”が通過していく(撮影:大澤誠)

ホームから転落して列車が近づいてきたときには、レールとレールの間に寝転べば列車が身体の上を通過するので助かるという“俗説”がある。はたして、これは本当なのか。

10月14日、千葉県成田市にある鉄建建設・建設技術総合センターで、ある試みが行われていた。レールとレールの間にうつ伏せになった数人の子供たち。「さあ、列車がやってきますよ~」。指導員の声に続き、ガラガラガラと音を立てて“列車”がやってきた。

その刹那、1人の子供が「うわわあああああ」と大きな悲鳴を上げた。もちろん、これは本物の列車ではない。小さな車輪の上に乗せた細い金属の棒を列車に見立てているだけだ。ただ、その子供が驚いたのも無理はなかった。彼らは目の不自由な盲学校の生徒なのである。

線路上を走るのは意外と難しい

この日、センターを訪問したのは、千葉県立千葉盲学校中学部の生徒13人と教員14人。同センターには、本物とまったく同じ駅のホーム、線路、踏切などが屋外に設置されている。鉄道会社や工事会社の社員の研修用に作られたものだが、スケジュールが空いているときは教育目的に使われることもある。

千葉盲学校はセンターの設備を使って、視覚に障害のある生徒がレールや非常ボタン、踏切などに触れ、その構造や仕組みを理解し、歩行指導の一助とする取り組みを2011年から行っている。今回で3回目となる。

生徒たちは指導員からガイダンスを受けた後、まずホームで点字タイルや滑り止めの細長い棒が付いた黒いマットを実際に触ってみた。そして、ホームの端も手で触って、どこまで進んだら転落するかを肌で理解していた。

続いて、ホームから線路上に降り、レールを実際に触った。枕木やバラスト(砂利)も触ってみて、線路上はかなりデコボコしていることを手で感じる。線路上を走るのは健常者でも難しい。目の不自由な人が走って逃げるのはかえって危険であることを認識してもらうのが目的だ。

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