黒澤明の遺言(いげん) 都築政昭著

黒澤明の遺言(いげん) 都築政昭著

巨匠黒澤明の箴言(しんげん)に対応した話題や映画技法論、問題意識などを論じた88編。どれも生き生きして読み応えがある。時代順に作品が現われ、その時々の監督の意図や苦悩を知るのに都合がいい。もっとも監督としてシナリオライターとして、基本は一貫していてほとんどぶれがないのだが、特に晩年の作品で黒澤が言いたかったことがよくわかる。環境汚染、核(原発含む)、権力(言論含む)、官僚主義、誘拐など、許せぬものを「芸術映画にして通俗映画」へ昇華させる一生だった。

戦争協力批判に弁解もせず『わが青春に悔なし』を撮ったいきさつ、『乱』の撮影ヤマ場で主人公の秀虎が黒澤に憑依したかのような実話、シナリオや音楽や撮影そして演技での同志たちとの数限りない衝突。黒澤映画にあふれるヒューマニズムと面白さの解明は興味深い。ここまで妥協を排したからこそ偉大な作品が相次いだのだろう。強く生きるヒントも多々あり、再読三読したくなる本だ。(純)

実業之日本社 1785円

  

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