「1億総活躍社会」っていったい何ですか

担当大臣が担う本当の役割

何とも唐突なイメージもあるスローガンですが……(写真:kou / PIXTA)
第3次安倍改造内閣の目玉政策として掲げられた「1億総活躍社会」。その政策実現の旗ふり役となる「1億総活躍担当相」。内外からいまだ違和の声が上がるものの、一国の首相が「目玉」と位置づけるからにはやはり重要な役割を担わされているはず。著作『紋切型社会』で注目を浴び、現代社会を鋭い視点で看破するライターの武田砂鉄さんに聞いてみた。ホントのところ、あの大臣ってどうなんですか?

「国民一人ひとり」と相反する「1億総活躍社会」

ボクはまだ独立して1年弱の駆け出しのライターだが、「ボクの文体、一部では『タケダノライティング』として話題になっているんですよー」と書けば、この人は相当に痛々しい人だと周囲が口を揃えるだろう。自分で自分の名前を含ませたフレーズを連呼するなんて、どの場面でも恥ずかしい取り組みに違いないが、私たちがうっかり馴染んでしまった「アベノミクス」という言葉は、まさにそうやって自発的に積み上げてきたものであった。

つい先日、「新3本の矢」を提示した安倍首相は、その会見で、「本日、この日から、アベノミクスは、『第2ステージ』へと移ります」と、自らの名をかざした経済政策をそのままに、次なるステージに持ち運ぶことを一方的に宣言した。「新3本の矢」を紹介するフリップには「アベノミクスの果実を活かし……」との文言。「アベノミクスによる成長のエンジンをさらにふかし、その果実を、国民一人ひとりの安心、将来の夢や希望に、大胆に投資していく考え」だという。成長、果実、安心、夢、希望……「国民一人ひとり」に向き合いようのない、エンジンを空焚きするような言葉が並んだ。

「国民一人ひとり」と見事に相反するフレーズが、アベノミクス第2ステージで高らかに宣言された「1億総活躍社会」ではないか。この言葉が投じられたときに、この国の数千万人が「1億総懺悔」「1億総玉砕」といった、かつての消極的なフレーズを思い返したはずだが、そういった声が上がる可能性すら、周囲が言付けできなかったのだろう。安倍首相は、自分に対して物申してくる人材を周囲に置いてこなかったが、そのことを再度知らしめたとも言える。

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