東急電鉄が取り組むO2Oによる街づくり(前編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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「いちばん苦労した点は、商業現場の方々にITサービスをどう使いこなしてもらうかというところ。IT系の施策は、わからない方から見ると、面倒の一言に尽きるところがある。だが、みんなに前向きに使っていただいて初めて高い効果が出る。利用者にとってだけではなく、店舗側にとってもわかりやすい仕組みでないといけない。さらに重要なのは、店舗との関係性をどう築くか。店舗との厚い関係性を作り、実際の利用を高めていける仕組みをどう作るのか。街全体アプリという世界では、非常に重要な課題だ」

街づくりにO2Oを取り入れる背景には、市場の変化による危機感がある。

「昔はマンションを建設すると、特に熱心な営業をかけなくても入居者が集まった。最近は、人口減少、少子高齢化、巣ごもりやネット消費が進み、街に人が出てこなくなった。都市間競争に負けると、郊外型の昔のニュータウンのように街自体がさびれていく傾向にある。生き残るためには『人をひきつける仕掛けと付加価値の創造』が必要だ。その仕掛けのひとつがITの活用だ」(福島氏)。

2000年代は、携帯電話の普及が進み、「いつでも・どこでも・誰でも」情報にアクセスできるようになった。利用者にとっては利便性が向上したが、街づくりの立場としては、逆に街の特色を出すことが難しくなったという。利用者の移動することへのモチベーションの低下にもつながった。

10年代に入った現在は、どのように街の付加価値向上へITを取り入れるのか。福島氏は次のように話す。

「『イマだけ・ココだけ・アナタだけ』というキーワードで人と街の多様性を表現する。利便性だけではなく、街に来ることで得られるプラスアルファの価値を利用者に提供する。今後は高度なデータ解析が可能になり、よりリッチな情報、より個人に最適化した情報を配信できるようになる。たとえば二子玉川に何時に来た人だけ、二子玉川に平日朝来て夜帰る人だけにといったように。街の付加価値競争において、こうしたデータを活用できることは非常に大きい意味がある」

付加価値競争に勝たなければ街は生き残れない。その1つの方策が「街づくりの中のO2O」なのだ。

「イマだけ・ココだけ・アナタだけ」のサービスをいったいどのように実現するのか。次回は最新IT技術を駆使した、具体的な仕組みの内部と今後の目標を聞く。

(ITアナリスト・松浦由美子 撮影:吉野純治 =東洋経済オンライン)

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