関空・伊丹の経営統合、債務軽減の切り札でも、共存共栄は可能か

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浮く存在の神戸空港 完全一体化にはまだ距離

また、神戸空港は海上空港で騒音被害などが少ない割には、運用時間は短く、国際線は飛ばせないというしばりもある。100万都市の神戸市とその周辺地域は人口も多く、アクセスも悪くない。だからこそ、神戸空港も入れて、できるだけ制限をなくしながら3空港でより効率的な運営を行うべきという意見もある。

伊丹空港も一つの問題を抱える。今回の経営統合で、同空港のターミナル会社・大阪国際空港ターミナルが外されたことだ。

同社は大阪府、大阪市、兵庫県、神戸市が株式の50%、残り半分を財界が持つ半官半民。10年度は売上高203億円、営業利益は約13億円の黒字で、経営状態はよい。だが、よいがゆえに「統合でなくすのは非常に難しい」(上村教授)。経営がよく、配当もよければ株主としてその企業をなくすのは惜しい。TOB(株式公開買い付け)などで株式を買い取ろうにも、「買い取る金額はかなり高額になって、そう簡単ではない」と上村教授は指摘する。

これは、空港建設当初に滑走路など施設はつくっても、ビルをつくる資金がなかった、という事情が作用している。ビルは商業施設であるため、民間からカネを出させてつくろうということになり、ビル会社は半官半民といった形態になってしまった。これは、羽田空港も同じで、ターミナルビルは民間企業だ。

経営一体化を突き詰めるならターミナル会社の買い取りなどを行う措置が必要だが、この問題の解決には困難が避けられないだろう。

 

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