関空・伊丹の経営統合、債務軽減の切り札でも、共存共栄は可能か

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経営権の売却金額でバラ色の将来も

ただ、1兆円超の負債を軽減するためには、それなりの金額で事業運営権が売れなければならない。

金額などはこれからの話になるが、1兆円、あるいは8000億円程度、という話も聞こえている。「それくらいの金額になれば、債務も圧縮できて利息支払いが楽になる。伊丹空港の収入も加わり、経営は改善する」と関西学院大学経済学部の上村敏之教授は指摘する。収支が改善すれば、世界でも高額な飛行機の着陸料も下げられる。路線も増えて、さらに人が集まる──。そんな“バラ色”の予測も出始めた。

関空自身の努力も垣間見える。今秋にはLCC専用ターミナルも建設。ほかにも土地の造成など「新会社が運営しやすいように、またコンセッションでもより有利になるようにしている」(関空)という。伊丹空港があるため、路線が少なかった国内路線も、ピーチやほかのLCCが参入してくることで改善、海外からの乗り継ぎ客の増加も期待できる。

それだけでない。「遠い」とされるアクセスも、鉄道・バス、タクシー会社と協同で新商品を企画するなど、運賃を下げ客を取り込む努力を続けている。

ただ、今回の統合には神戸市が管理する神戸空港は外された。「本来は神戸も入れて、一体運用を図るべき」と早稲田大学アジア研究機構の戸崎肇教授は指摘する。関西、神戸ともに建設の際にはさまざまな議論が湧き起こり、必ずしも関西全体として最適な空港設置が図られたわけではなかった。

とはいえ、05年には大阪府、兵庫県の各知事や大阪市、神戸市の市長、関西経済連合会(関経連)会長などで構成された関西3空港懇談会で了承された「関西3空港の在り方」が発表、各空港の役割分担が決められている。それなら、3空港を一体化してより効率的な経営を図るべき、との声も少なくはない。

 

 

 

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