成田と羽田の空港間競争、格安エアライン就航を促す

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縮小


国際空港の成田が地元合意を得たうえで、30万回に拡大という大決断を下したのは、こうした羽田の国際線拡充が背景にある。航空ジャーナリストの杉浦一機氏は「羽田の国際化で、成田に初めて危機感が生まれたのではないか」と指摘する。現在、関西地区では関空と伊丹の一体運営が話題になっているが、首都圏ではむしろ「こうした空港間競争があったほうがいい」(関西学院大学の上村敏之教授)と見る向きは多い。千葉県でも、成田空港を軸にした経済活性化に向けて、官民挙げた取り組みも始まっている。

成田では、3月末に首都圏初のビジネスジェット専用ターミナルが誕生。7、8月にはジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンの格安航空会社(LCC)2社が就航するなど、これまで国際線主体で手薄だった国内線の拡充も進む。また、成田は航空会社が自由に路線や便数を設定できるオープンスカイの対象に加わる予定で、まさに、さまざまな航空需要に対応する体制が見えてきたところだ。

LCCが成田に要望するローコストの専用施設

今夏の就航を前に、LCCの担当者は、成田や就航先の空港を飛び回る日が続いている。LCCの生命線、ローコスト経営を追求できるかどうか、瀬戸際に立っているのだ。

「他社との絡みがあるので、LCCだけに施設料や着陸料を下げるのが難しいというのはわかる。であれば、LCCに見合った施設を提供してほしいとお願いしている」(ジェットスターの片岡優日本支社長)

エアアジア・ジャパンも、専用で使えるターミナルビルをローコストで造ってもらう方向で交渉中だ。今年は暫定施設でのスタート。いずれ、本格的なLCC施設を造ってほしいという要望は両社共通している。

考えてみれば、成田はLCCにとって使いづらい空港である。採算性から見ると、LCCの理想は1日4往復だが、成田は24時間空港ではないし、午前や夕方の離発着集中時に、入り込む余地は残されていない。

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