インドネシア新規制で資源調達に新たな試練

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他の資源国に広がる懸念

「今回のような保護主義的な政策で工業化がうまく進めば、フィリピンやニューカレドニアなど、ほかの資源国も同じような政策を採るだろう」。日本鉱業協会企画調査部の永田禎彦氏はそう懸念する。実際、インドネシアに限らず、自国資源の国家管理を強める資源ナショナリズムの動きは世界各国で頻発している(図参照)。

典型的なのは、権益国有化や鉱業税導入などの動きだ。2000年以降の資源価格高騰の恩恵を直接的に得ることを狙っている。「鉱山が儲かる産業になったため課税を強化しようとする動きで、発展途上国に多い」と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)企画調査部の廣川満哉氏は解説する。

最近になって増えてきたのが今回のインドネシアのように、資源を活用して産業発展につなげる動きだ。

発展途上国である資源国が工業化を狙うのはある意味当然だが、コストを負担させられる側はたまらない。「途上国では製錬所の建設だけでなく、発電所などのインフラ整備も必要。減価償却が済んだ日本の製錬設備と比べ、莫大なおカネがかかる」(前出の永田氏)。採算性と安定調達をどう両立させるか、日本の製錬会社にとって頭の痛い問題だ。

「今後はWTO(世界貿易機関)などの活用により、資源供給が途絶える可能性を排除することが必要」(経産省)と国も支援の姿勢を見せてはいる。ただ国際的な枠組みの議論は時間を要する。企業は代替輸入先の確保など、できることを粛々と進めていくほかはなさそうだ。

(許斐健太 =週刊東洋経済2012年5月19日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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