インドネシア新規制で資源調達に新たな試練

拡大
縮小

 

しかし、高付加価値化は14年に本格実施するとされただけで、詳細は不明だった。今年2月に同法の付則の大臣令が施行され、急きょ、3カ月後に製錬が義務化されることになり、業界を慌てさせた。

新鉱業法の対象となっている鉱物資源の中で、禁輸された場合、日本に深刻な影響が生じると懸念されるのが、ニッケル鉱石である。

ニッケルはステンレス鋼や電池などに幅広く使用される。中でもステンレス鋼の中間原料となるフェロニッケルの鉱石は、インドネシアに多く眠る。日本は同鉱石の過半をインドネシアから輸入し、住友金属鉱山などの製錬会社がフェロニッケルに加工している。同鉱石が禁輸されれば、日本でのステンレス生産は大幅縮小を余儀なくされかねない。

そうした事態を避けるため、昨年、インドネシアを訪問した枝野幸男経産相がハッタ経済担当調整大臣との会談で、同規制についての懸念を表明するなど、政府も働きかけを続けてきた。

現時点では、禁輸は現実的な措置ではないとの判断から、インドネシア政府は代替策を検討しているとみられる。その一つが、将来的な製錬所の建設計画を提出した場合に、輸出を許可するとの措置だ。また禁輸措置の代わりに、鉱石に輸出税を課すとの議論もある。

日本企業はフェロニッケル鉱石を主に現地の鉱山大手アンタム社から輸入している。同社には製錬所の建設計画があることから、輸入断絶は回避されるとの見方もある。ただインドネシア政府が正式な対応を発表していない以上、事態は流動的だ。

 

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