アンダーアーマーは「雑草魂」が支持された 「天賦の才」ではなく「ひたむきな努力」に焦点

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スポーツブランドにとって、女性は長い間後回しにされ続けてきた。しかしこれは、カナダのヨガウェアブランド「ルルレモン・アスレティカ(Lululemon Athletica)」やアンダーアーマーなど、女性セグメントを優先するブランドによって変化してきている。

ナイキもこれに倣っている。アンダーアーマーは女性に対して誠実に対応するため、業界の習慣であった「既成の男性物のデザインをサイズダウンし、女性が好むピンクなどの色に変える」といった方法を採っていない。これにはヒートギアシリーズの吸汗速乾に優れたスポーツブラや、コットン製のフリースズボンなどが含まれている。

「I will what I want」キャンペーンも女性を中心に考えたキャンペーンで、ミスティー・コープランド氏以外にも、スーパーモデルのジゼル・ブンチェン氏、プロスキーのリンゼイ・ボン選手や、プロテニスのスローン・スティーブンス選手ともコラボレートした。

「彼女たちは、女性向け商品の規格が男性向け商品と同じになっているかを確認していた。また、彼女たちは女性も男性と同じように扱うことが大事なのだと気づいた」とガットフレウンド氏は話す。「彼女たちにとって、『fempowerment(女性に力を与えるという造語)』は、単なるタグライン(顧客に利点をわかりやすく伝えるための表現)ではなく、哲学なのだ」。

「アスレジャー」で若い世代をつかんだ

アンダーアーマーがミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた若年層)やジェネレーションZ(1990年代前後〜2000年代終盤に生まれた世代)などを掴んでいるのは「アスレジャー」のおかげだ。アスレジャーは運動競技(アスレチックス)と余暇(レジャー)を組み合わせた英語の造語。スポーツブランドでヨガの衣装や競技者と同じスポーツウェアを普段着として着こなすスタイル。若者の間で人気が沸騰しており、米国の10代では「ジーンズを捨ててスポーティな服に切り替える」現象が起きている。

「アンダーアーマーは近年流行しているアスレジャーの波にうまく乗ることができた」と、米調査企業のForresterでアナリストを務めるスチャリタ・ムルプル氏は話す。「チームスポーツのアパレルに関しては、アンダーアーマーが、最も人気になっている。当然、学生の間で最も有力な立ち位置にいて、ほかのブランドはあまり見ない」。

アンダーアーマーは、試合やイベントをリアルタイムでエンゲージするため、ソーシャルは自社で取り扱っている。これによって、アンダーアーマーは自然とスポーツについて語ることができ、契約しているアスリートを通じてファンとつながることができる。Twitterには54万1000人ものフォロワーがいて、Facebookには380万人のファンを保持している。

また、アンダーアーマーはいくつかのキャンペーンにおいてソーシャルの力を使っている。「Ultimate Intern Program(究極のインターン・プログラム)」では、FacebookやTwitterを通じてインターンを募集したところ、5000人以上が申し込み、その内2人がマーケティングチームのインターン生となるほどだ。

(文:小嶋太一郎、吉田拓史/参考記事)

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