「戦後70年」をテレビはどのように伝えたのか 従来の終戦企画とは一線を画す作品が続々

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広瀬すず、有村架純、福士蒼汰、松坂桃李、小栗旬が次々に登場したフジテレビの特番「私たちに戦争を教えてください」が典型的だが、他でも若手の人気タレントが戦争体験者の話を聞き、若い彼らを通じて悲惨な出来事を伝えようとする番組が目立っている。

日テレやTBSも若手タレントを「若い世代」との媒介として登場させているが、この動きはキー局にとどまらない。広島テレビは人気女優の綾瀬はるかが被爆した中学生たちに関する手記を読み上げるドキュメンタリーを是枝裕和監督の演出で制作して全国放送。東海テレビも系列局の戦争にかかわる名作ドキュメンタリーを放送して、女優の樹木希林が現地を旅するという番組を放送した。ドキュメンタリーだけではリアリティが伝わりにくい時代とあって、そうした媒介役が頻繁に使われる時代になったと言えそうだ。

「靖国」や「日の丸」を扱う番組も

今までならば「戦争賛美」「復古主義」などと批判を浴びた可能性がある番組も、今年は放送された。TOKYO MXは「戦争を経験した世代が少なくなっているのが現状である。戦争が段々と遠いものになってきているなかで、戦争経験していない世代と経験した世代とを繋ぎ、伝承していけるよう『靖国神社』などの皆が知っている身近な場所を入口として、戦争を伝えていく工夫をした」として、従来はメディアで批判的に描かれることが多かった靖国神社を取材した。

テレビ大阪の「ザ・ドキュメンタリー 終わらざる戦後 日の丸・君が代のいま」は「日の丸・君が代は、ニッポンの誇りか、軍国主義の象徴か。曖昧なイメージの国旗・国歌、その謎を探る」として戦後日本が処理しきれていない問題をすくい上げる意図を持ち、従来ならタブー視された問題に踏み込んだ。

戦後70年の今年は武器輸出、集団安全保障をめぐる憲法解釈の変更、安保法制の成立など、日本の安全保障のありようが一変した節目になった。だが、「戦争法案」と形容した批判もあったが、報道の難しさから「戦後70年」企画と「今の政権」を別個の問題として扱う傾向も目立った。そうしたジレンマや迷いも垣間見える。

「安保法制や地方のあり方など、現代の問題については切り口やテーマ性の切り込みが容易でなく戦後70年で掘り下げることができなかった」(信越放送)、「時を同じくして安保関連法案の国会審議のニュースもあり、現代に共通するテーマとして戦争と平和を考える工夫をした」(静岡朝日テレビ)。

「(戦争体験についての放送が)戦後50年に比べ、減ってきているように思える」(テレビ北海道)、「戦争の体験者が減り続けているなか、それでも体験者にこだわってインタビューを収録する努力を続けている。いわゆる〝周年〟でみると、10年後の戦後80年に戦争体験者のインタビューをとることは、極めて困難であると思われる。だからこそ、今年は体験者の生の声にこだわっている。また、体験者の方々にアプローチする過程も映像化するなどして、OAに生かすよう心がけている」(RKB毎日放送)。

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