再就職に備えて「英語武装」を進める主婦たち スマホアプリ、オンラインと学ぶ手段は豊富

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学生時代からずっと海外生活にあこがれてきたという馬淵さん。20代には会社勤めで蓄えたお金でアメリカに渡り、ニューヨークでダンスレッスンを受けたこともある。子育て期間はそのまま英語力に磨きをかける時間でもあった。あともう少し――。子どもたちの成長に喜びを感じながらも、その視線は遠く海外にも向き始めている。

フィリピン人の女性講師に刺激された

上村春香さん(仮名、41)も、オンライン英会話を使って英語学習を続けている女性の一人。2人の子育てをしながら実父が経営する会社の手伝いをしている。得意の英語を生かして、海外展示会に出展する際のコーディネートなどを行うのが上村さんの仕事だ。

国立大学の経済学部を卒業後、外資系のコンサルティング会社に就職した。米国での研修も経験し、仕事の土台となるビジネススキルと英語力を身に付けた。しかし、働きづめで疲れ切った上司や仕事にすべてを捧げたような女性社員の姿を目にするにつけ、「ここでは自分の将来像が描けない」と5年目で退職した。

会社は辞めたものの、その先に進むべき道がわからない。司法試験にも挑戦したが断念し、とりあえず父親の経営する会社に入社することになったのは30歳のときのことだ。

6年前に音楽家の夫と結婚しドイツに渡った後も、社長である父親の融通もあり、電話やメールを使って同じ仕事を続けてきた。しかし上村さんは、そんな自分の生き方をどこか中途半端だと感じていたという。与えられた仕事と家事を“こなす”だけの毎日。ドイツにいながらドイツ語も話せない。自分にはいったい何があるのか――。

そんなときにインターネットでふと目にしたのがオンライン英会話だった。「英語ならある程度できるし、将来も役立つはず」と、さっそくドイツから申し込んだ。昨年秋のことだ。レッスンは思いのほか楽しく、「やりたいことをやっている」という感覚があった。そして、オンラインであっても“外の人”とかかわることで気分が晴れた。うつうつとした毎日に風穴が開いた。

「フィリピンの女性たちの英語力に感激し、彼女たちと話すことで刺激をもらいました。私も頑張らなきゃと前向きになれたんです」

それはまるで精神安定剤のようなものだったと上村さんは言う。昨年末に帰国し、最近は自分の将来を具体的に思い描けるようになってきた。

「子どもの手がもう少し離れたら、これまでの経験と英語力を生かして、海外出展したい中小企業に向けたお手伝いができればと考えています」

子育て中の女性は時間にも場所にも制約が多いもの。自分の思いどおりにキャリアを描けず閉塞感も漂いやすくなる。だからこそ、“外”とつながり、将来の可能性も広がりやすい英語に魅かれる女性は多いのかもしれない。スマホアプリやオンライン英会話の登場で、英語学習へのハードルは格段に低くなっている。主婦こそ英語――。そんな時代がやってきたのかもしれない。

金子 恵妙 フリーライター

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かねこ えみ

警察官、西日本新聞記者を経て、2008年よりフリーライター。女性の働き方、主婦の復職、子育てなどをテーマに取材。日本語教師資格を持ち、日本語教育関連のコラムなども執筆する。

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