兵隊先生 沖縄戦、ある敗残兵の記録 松本仁一著 ~知られざる沖縄と日本兵の交流を描く

兵隊先生 沖縄戦、ある敗残兵の記録 松本仁一著 ~知られざる沖縄と日本兵の交流を描く

評者 仲倉重郎 映画監督

 本書は、沖縄戦で瀕死の重傷を負い、自害に失敗して生き残った日本兵が、沖縄人の厚情に助けられ、米軍の追及を受けることなく避難民キャンプの小学校教師として活躍したというドキュメントである。

1944年7月、松本康男は、飛行機のエンジン整備工として千島から沖縄読谷に送られた。9月には台湾に移動する予定だったが、先発の輸送船が米潜水艦に沈められたので、読谷に残された。

戦争は激化し、10月に米軍の大空襲、45年3月には上陸戦が始まる。整備工の康男たちは入隊以来戦闘訓練をしたこともなく、武器も持ったことがなかったのに、前線に出る部隊として再編成された。

南方への行軍中に瀕死の重傷を負った康男は、洞窟に隠れていたところを村人に発見され、具志川村泡瀬の避難民キャンプに連れていかれる。村人たちは、康男が日本兵だと米軍に知られないよう守ってくれた。

45年5月、キャンプで小学校が開校されると、康男は教師を頼まれる。中学を出ていたからである。生徒は6歳から12歳まで、約200人。教師の仕事は面白かったが、授業ばかりで変化がない。康男は運動会をやろうと思う。校長たちも大賛成で、10月の最初の日曜日に行われた。米軍将校も視察に来た。

康男の活躍で運動会は大好評に終わったが、それがいけなかった。康男が元日本兵ということが米軍に知れたのだ。クリスマスイブの朝、金武村の捕虜収容所に収容された。

康男の行動やキャンプでのデテールは、とてもリアルである。小説かと思うほどだが、それだけ著者の事実の掘り起しがよくできているということでもある。本書の主人公は著者の父親であることが最後に明かされている。

まつもと・じんいち
ジャーナリスト。1942年長野県生まれ。東京大学法学部卒業。朝日新聞社入社。ナイロビ支局長、中東アフリカ総局長、編集委員などを歴任。ボーン・上田記念国際記者賞、日本新聞協会賞など受賞。著書に『アフリカで寝る』『カラシニコフ』など。

新潮社 1470円 238ページ

  

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