好調トヨタ、「慎重見通し」に透ける不安材料 タカタのエアバッグ問題にはどう対応する?

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トヨタほどの規模になると、業績はマーケット全体とほぼ連動する。新興国の復活が見込めない中、利上げが想定される米国はさらなる伸びは期待しにくい。一段の円安進行がない前提だと小幅増益にとどまるだろう。

ただ、この日の決算発表で記者の関心が集まったのはトヨタの業績よりも、タカタ製エアバッグへの対応だ。

前日にホンダがタカタ製エアバッグインフレーター(ガス発生装置)の採用をやめると発表したことを受け、トヨタの対応に質問が集中した。

タカタのエアバッグ問題については明言避ける

早川茂専務は「具体的な内容は言えないが、より安全、安心なものを使っていく」とのみ回答。会見後の囲み取材でも、タカタ離れを明言することはなかった。

エアバッグ問題では、複数の死傷事故が起こっているタカタ製エアバッグへ消費者の不安が高まっている。不具合の原因が究明できていないという理由で、タカタも自動車メーカーもタカタ製インフレーターの使用停止を明言してこなかった。

トヨタは2009年、2010年の大規模リコール以来、科学的な安全性だけでなく、消費者の安心を最重視する姿勢を鮮明にしてきただけに、歯切れの悪い対応に記者の間に失望感が漂った。

だが、現実問題としてトヨタもタカタ製エアバッグインフレーターの採用を減らしていくことは間違いない。すでにタカタ自身が主力であった硝酸アンモニウムという火薬を使ったインフレーターの新規受注は行わず、既契約品についても段階的に撤退することを表明済み。よって、トヨタにしても硝酸アンモニウムのインフレーターは使えなくなる。

タカタは硝酸グアニジンという他社が使用する火薬への切り替えを行う方針だが、グアニジン系でわざわざタカタ製を使う理由は乏しい。業界筋では、すでにトヨタはタカタ以外の会社とグアニジン系インフレーターの大口契約を行ったという話もある。タカタ離れは「言わずもがな」なのかもしれない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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