ヤフー社長、「過去最大の販促」をブチ上げ ショッピング事業は爆速成長できるのか

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それでは、巨額投資を行うショッピング事業の現状はどうか。上期のショッピング関連の流通総額は前年同期比24.4%増の2161億円で、ロハコの売上高約140億円も含まれるが、大部分がYahoo!ショッピングの取扱高。こちらも投資効果が出て、事業規模は順調に拡大しているようだ。

問題は、今後の収益性だ。Yahoo!ショッピングは、出店するEC事業者の手数料などを無料にすることで取引の活性化を狙っており、収益モデルは広告の一本足。ただ、広告売上高は取扱高に対して「現状は2%」(大矢俊樹・最高財務責任者)にとどまる。取扱高の伸びに伴って、EC事業者が広告費の投入を積極化していく期待はあるが、いつから利益貢献が実現するのか、そのメドはまだ見えていない。カードもポイント還元策などで投資が先行している。

アスクル連結化による一時的な利益を除いた上で、ショッピングやカード、ビッグデータ関連事業に投資が必要なことを考えると、生身のヤフーの成長力はどれほどあるのか。

ヤフーはこれまでも、ネットビジネスの主戦場がパソコンからスマホに移る中で成長力を保つため、全社的にスマホシフトを進めてきた。宮坂社長は「一定の成果は出たのでは、と思っている」と自己評価している。

集客力は強い。サービスはどうか?

実際に、ネット利用がスマホに移る中でも、アプリとブラウザを合算したヤフーの月間閲覧数(PV)は直近で約681億と前年比で9%増加。主力の広告事業の売上高に占めるスマホ比率は、14年度に30%前半だったものが、足元では40%を突破し、売上高、利益ともに伸ばしている。

次に見えてくる大きな課題は、月間700億近くにもなる圧倒的なPVに圧倒的な訪問者を、ECやカード、有料会員といったヤフーのさまざまなサービスにいかに効率的に流し込み、収益に結びつけていくかだ。

宮坂社長は「ECと有料会員、決済の間で、利用者が複数サービスを使っていく手応えはある。最大の挑戦になるのは、メディアの客をどのようにして、そのほかのサービスにクロスさせていくかだ」と展望を述べた。

この数年、利益成長の鈍化が目立つヤフーだが、再加速できるのか。最大の強みであるメディアパワーと相乗効果を生む施策が、育成事業の収穫期を早めるカギになる。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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