なぜ今でもタクシーはLPガス車ばかりなのか トヨタの生産終了でやがて無くなる運命

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また近年では、タクシー以外に、LPガストラックが増えているそうです。低公害で価格も手ごろ、なおかつ「クリーンなイメージを抱いてもらえる」というメリットから、運送業や自治体の清掃事業、宅配便や生協の配送トラックなど各方面でLPガスが使われています。

LPガス車は盗まれにくい!?

さらに、LPガス車は「盗まれにくい」とも言われます。盗んだところで、通常のガソリンスタンドでは給油できません。LPガススタンドも数が少ないため、どこで補給すればよいかわからない。結果、車泥棒からは敬遠されるようです。また、タクシーは多くが最近の乗用車では一般的ではないコラムシフトレバーを採用しているため、扱いづらいという点も防犯に貢献しているようです。

現在、日本で走っているタクシーの9割はトヨタ製(1995年に発売したクラウンコンフォートが主流)です。2014年9月に日産自動車がタクシーのベース車となる「セドリック営業車」の生産を終了したため、現在、セダン型タクシー向け車両を生産しているのはトヨタのみになりました。

そのトヨタも2017年末までに、LPガスオンリーによるタクシー向け車両を生産終了すると発表しており、2015年の東京モータショーにて発表されたLPガスハイブリッドシステムを搭載したミニバン型のタクシー専用車が近い将来、タクシーのベース車として普及していくことになりそうです。現在のようなLPガスオンリーのエンジンを積んだセダン型タクシーは、やがて無くなってしまう運命にあるようです。

なぜ一般向けに普及しないのか?

排気はクリーンで燃費もいいとなれば、LPガス車をもっと一般ユーザーの車に普及させればいいのでは?と思いたくなりますが、なかなか難しそうです。その理由は以下のようなことが考えられます。

・LPガスを充てんできるスタンドが少ない
・定期的なガスタンクの交換が必要など、メンテナンスが大変
・ガスタンクがトランク内で大きな位置を占めるので邪魔
・年間走行距離がタクシーと比較して少ない一般のユーザーにはメリットが少ない
・ガス=爆発のイメージで恐怖感を覚える人がいる

 

コスト面のメリットが年間10万キロ以上走るタクシーほど得られないこと、インフラの未整備やガスへのマイナスイメージといった点で、LPガス車はやはり一般には普及しづらいようですね。

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加藤 久美子 オールアバウト 車ガイド
かとう くみこ / Kumiko Kato

大学在学中に国産車ディーラーで納車・引き取りのアルバイトを始め、そこでクルマの面白さに目覚める。大学卒業後、日刊自動車新聞社出版局に入社。フリーランスになってからは一般誌、女性向けライフスタイル誌、育児雑誌を中心に寄稿。チャイルドシート指導員の資格を持ちボランティアでチェックアップなども行う。愛車は22万キロ走行の98年型アルファスパイダー。現在14歳の息子が乗り継ぐ予定。著書に「固有名詞子育て」がある(朝日新聞出版)

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