農家男子と結婚!元ダメンズ女子の"本音" 「結婚スイッチ」が入ったそれぞれの瞬間

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後になってから妻に聞いてみると、「田舎育ちの人間には当たり前」の作業と会話だったらしい。しかし、筆者は彼女の生活力に感銘を受けた。家事やご近所付き合いが好きな母の姿とも少し重なった。圭介さんと同じく、女性の「しっかりした」面を目の当たりにして初めて、結婚へと歩みを進めることができた。

深まる「自分たちの家」への愛着

圭介さんと香奈さんには結婚に向けてひとつ課題があった。どこに住むか、である。地元志向と持ち家志向が強い愛知県民にとっては、県外どころか町外でも別世界である。社会人になってもできれば実家に住み続けて節約したいと思っている県民性なのだ。

圭介さんと香奈さんは長く実家暮らしであり、地元への愛着も強烈である。圭介さんの農地も香奈さんの飲食店もそれぞれの実家と近いため、車で1時間以上の距離があるお互いの実家に住むことは考えにくい。話し合いの末、中間点からやや香奈さんの実家寄りの自治体でマンションを借りて住むことに決めた。現在は、2人ともがこのマンションを「自分たちの家」だと思うようになっている。

「朝7時には家を出なくてはいけませんが、朝食も作ってもらえます。夕方は日が暮れたら農作業は終わりなので、基本的には真っ直ぐ家に帰って来ます。たいてい2人で夕食を一緒に食べられる。今ではこの家に早く帰って来たいと思うようになりました」

酔いが回って来たのか、おじいさんのように目を細めながら圭介さんは淡々と語る。隣で嬉しそうに聞いていた香奈さんも神妙な口調で圭介さんの気持ちに応えた。

「絶対に結婚したかったわけではないけれど、流れに任せて結婚したら落ち着きました。居心地のいい自分たちの家があり、帰ったらダンナさんがいる。とても安心感があります」

いじられ上手な圭介さんとしっかり者の香奈さん。性格は真逆だが、どことなく笑い顔が似ている。お互いの存在に安らぎと面白みを見出し、同じ家に住んで同じものを食べ続けていると、表情まで一体化してくるのかもしれない。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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