【産業天気図・パルプ/紙】値上げ浸透でも追いつかず。再値上げに望みつなぎ後半も「曇り」

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紙パ業界の07年度は、前半、後半とも「曇り」となりそうだ。前回(3月)時点の予想では後半が「雨」であったが、懸案の値上げが多少なりとも通りそうな環境になってきたからだ。
 ここ3年というもの、悩みのタネとなっている原燃料高と価格転嫁の不足。原油高騰による燃料高が製紙工程上のコスト高にかかるだけでなく原料の木材チップや製品の輸送コストにも跳ね返る。また、原料価格の高騰も深刻だ。チップ価格の高騰がコストを押し上げる要因になっている。大手製紙メーカーの主要なチップ購入先は北米だが、現地での住宅着工件数が減少し、排出される木材チップが減少していることが一因だ。さらに、段ボールやトイレットペーパーなどの家庭紙の主要原料である古紙供給が細っており、価格が急騰していることも見逃せない。情報用紙などの白い紙であっても近年は古紙を利用するのが通例であり、古紙不足は深刻な問題だ。中国での紙需要の急増によって輸出が急増し、国内に古紙が残らない状態になっている。
 こういった状況からコストが年間10%近く上昇している計算になる。このため、洋紙、家庭紙、段ボール原紙とも、大手製紙メーカーを中心に昨年春ごろから紙卸業者に対して値上げ攻勢をかけているものの、実際に通ったのは3%程度。しかも年度も後半に入ってからで、2006年度の収益には半分程度しか貢献がなかった。2007年度にはこの分は上期から貢献してくるが、原油高やチップ、古紙、さらには製紙用薬品価格の上昇懸念が残る下期には、これだけでは不足だ。
 5月連休明けから王子製紙<3861.東証>、日本製紙グループ<3893.東証>の2強を中心に「全カテゴリー例外なく値上げ」という値上げ交渉に入っている。同業との競合のなかでこれまでは値下げはしても値上げはあり得なかったトイレットペーパーなど家庭紙でも、27年ぶりに値上げに踏み切るなど、業界の常識を破る勢い。メーカー側が希望する10%は無理だとしても、年度後半から3%程度の値上げができれば、紙パメーカー各社の収益は多少改善に向かう。卸側も、多少の値上げはやむを得ないと理解を示す。だが小売り業者がどこまで値上げをのむかが未知数なため、板挟みとなった卸・専門商社の収益が急悪化する懸念も残る。
【小長洋子記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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