検証・米国経済は改善していない

拡大
縮小

FOMCメンバーの中でも意見は割れているが、ハト派とされるイエレン副議長が政策維持を示唆していることもあり、FRBウォッチャーの多くは6月にツイストオペが終了するまでは現状維持と見る。

一方で、共和党からはつねに、FRBのバランスシート拡大について、インフレにつながるとの批判の声が出されている。バーナンキ議長が10年11月のQE2の後、11年9月には、長期国債を買い入れて長めの金利を引き下げる一方で、短期の国債を売却してFRBのバランスシート膨張を抑えるツイストオペを導入したのも、こうした批判に応えたものだ。

最近も、ガソリン価格の上昇が消費マインドを冷やしていると指摘されているうえ、バーナンキ議長は資金を供給したまま放置しない「不胎化QE」についても言及している。

みずほ総研の小野主席研究員は、追加の金融緩和の時期について、13年の歳出削減が懸念され始める8月のジャクソンホール講演で、バーナンキ議長が再び緩和を表明するのではないかと見ており、その緩和内容も「MBS(住宅ローン担保証券)を購入する一方、TDF(ターム物預金)で資金を吸収する不胎化政策を行うのではないか」と予想している。ツイストオペでは短期の国債を売ることで、短期金利が上昇してしまった経緯があるからだ。

では、米国経済が本格的な回復期に入るのはいつ頃か。

住宅価格が下がり続ける中で、持ちこたえられなくなるとされるデフォルト予備軍は、1000万件ともいわれる。住宅ローンのデフォルト、投げ売りなどの調整が終わるにはあと2年は要するというのが多くの専門家の見方だ。したがって、本格回復に向かう条件が整うのは、15年以降と見る人が多い。

労働市場のミスマッチという構造的な問題も

ただし、米国経済の中長期での回復についても、バブル崩壊前の水準に戻ることは難しいのではないか、という見方が台頭している。日本との違いは、移民が多く人口が増えていることで、これが経済の活力となってきた。しかし、最近、注目されているのが、雇用のミスマッチだ。

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