検証・米国経済は改善していない

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2013年の緊縮財政控え夏場に一段の金融緩和か

3月については、ほかの米景気指標も、16日に発表された小売売上高は、前月比0・8%増で予想を上回ったものの、17日に発表された鉱工業生産指数は横ばいとなるなど、まだら模様になっている。

ここ数年、アノマリー(従来の経済理論からは合理的な説明ができない現象)が繰り返されており、景気指標はここから危うくなってくる可能性が高い。

さらに、13年には「財政の崖」と呼ばれる緊縮財政が控えている。これが、夏場から重しとなる可能性がある。昨年8月、S&Pが基軸通貨国である米国の国債を「AA+」に格下げし、衝撃が走った。このとき、債務上限の引き上げをめぐって民主党と共和党は13年以降の歳出削減で合意している。オバマ政権は10年間で4兆ドルの赤字削減を行うとしており、13年はブッシュ減税(高所得者向け優遇措置)や給与税減税の失効、支出上限による削減などで約6500億ドルの財政抑制となる。今年の後半以降は、企業の投資や雇用の抑制に下押し圧力が働くとみられている。

今、株式市場は、欧米の経済指標に一喜一憂し、関係者は日米の金融緩和政策に望みを託し、6月へ向けた米FOMC(連邦公開市場委員会)、27日の日銀金融政策決定会合に注目している。

バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、景気への悲観的な見方が台頭すると、QE3(量的緩和第3弾)実施の可能性をほのめかしてきた。さらに、ECBの大量の資金供給と併せて、1月にはFRBによる14年遅くまでのゼロ金利政策継続の表明、2月の日銀による1%の「インフレメド」といった一連の動きが、日米欧の金融相場を形成してきたといえるからだ。

しかし、米国の景気の現状からすれば、すぐに金融緩和を実施する必要性は乏しい。景気が暗転すると判断するにはまだ材料不足だ。


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