東京都の女性再就職支援サービスは「穴場」だ 初年度は337人が再就職に成功

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テラスが通いにくい場所にある人は、都内各地で実施されている5日間の短縮版を利用するといいかもしれない。このほか、初めの一歩を踏み出したい人向けに、個別相談会や託児付きの「再就職支援セミナー」や、子ども同伴可の「子育て女性向けセミナー」も都内各地で開催されている。

中小企業こそ子育て女性が働きやすい!?

テラスに集まる求人のほとんどが、中小企業のものだ。大手志向の強い人は抵抗があるかもしれないが、実はブランクや制約のある女性にとっては、中小企業の求人内容は魅力的に映るものが多い。なぜなら、前述した勤務条件の調整に比較的柔軟に応じてくれるから。そしてもう一つ、女性に人気の事務職への内定も夢ではないからだ。

一般的に事務は有効求人倍率が低いとされるが、テラスを通じて内定した利用者は事務職での採用が多い。「営業はもう体力的にムリ」「今は仕事をセーブして子どもが手を離れたらステップアップしたい」と、今のコンディションを重視する女性にとって、中小企業の求人は“狙い目”なのである。

さらに今、「女性活用という社会全体の流れもあり、求人数は増えている」(しごとセンター課長の山本麻里雄氏)。どんな企業もホンネでは「若者がほしい」と思っている。しかし、労働人口が急激に減っている今、若者を大手にとられてしまう中小企業の中には、ブランクがある女性でも「能力があればぜひ採用したい」と考える企業が増えているそうだ。

社会経験のある女性は、若者よりも気配りやコミュニケーション能力に長けており、入社後の評価も高い。「普通の転職市場では採用できないような、ハイスキルを持った人をとれる可能性もここにはある」と、山本氏は話す。再就職を希望する女性と中小企業のマッチングは、うまくいけば双方にメリットをもたらすハッピーな組み合わせなのだ。

しかし、採用ノウハウがない、勤務条件に制約がある女性をどう活用したらよいのかわからないなど、難しさを感じる企業もまだ少なくない。こうした背景もあり、テラスでは企業向けのセミナーも行っている。主な内容は、講師が女性の採用・定着・戦力化のポイントについて語る講演と、女性の定着率が高い企業や復職女性によるパネルディスカッションだ。

「育児や介護明けで復帰する際の面接は丁寧に行うが、法定内のサポートしかしておらず、特別な配慮はしていない」「人に仕事がついている状態はダメ。仕事をシェアする体制を整備している」など、具体的な事例が聞ける機会になっている。今年7月に初めて開催した際は、定員を上回るほど好評だったという。再就職したい女性と中小企業のマッチングは、経済活性化に向けた大きなカギにもなりうる。そういった意味でも、テラスのような支援の場が今後増えていくことを期待したい。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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