事後レポ

海外M&Aを成功に導く
戦略とリスクマネジメントの実際

戦略シナリオの実行を支える格付け評価の新標準

空前の活況を呈する海外M&Aを考える「グローバル経営戦略フォーラム」が9月、東京・千代田区で開かれた。M&Aにまつわる信用格付けに与える影響や買収候補のリストアップや企業価値算定など、買収成功のカギとなる戦略とリスクマネジメントのあり方を検討した。
●共催:スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン、S&P Capital IQ、東洋経済新報社

基調講演
海外M&A:リスクテイクとガバナンス

【基調講演】
御立 尚資
ボストン コンサルティンググループ (BCG)
日本代表

BCGの御立尚資氏は「ビジネスモデルの変革を目的としたM&Aが増えています」と、海外M&Aに目を向ける日本企業の現状を説明。収益ボラティリティが増す中でM&Aを成功させるカギとして、災害等のイベント対応を含めたリスク管理と、内部リスクを抑えるガバナンス確立を挙げた。

御立氏は「企業業績が、競争に関係のない部分で大きく左右されるようになっています」と指摘。2011年のタイ洪水など水害をはじめとする自然災害、新興国の工業化と人口増によるエネルギーや食糧安全保障への欲求が引き起こす地域紛争など、発生確率は低いが激甚な影響を及ぼすリスクを想定したシナリオ作りを求めた。また、買収した会社の元の経営陣に、そのまま経営を任せる場合の注意点として、稟議やマーケットデータなど経営の見える化、役員報酬や後継経営陣の準備など人事面の把握、業績低迷時に本社が介入する場合のルールの明確化に言及。「売り手の協力を得られるディールクローズまでにガバナンス上の問題点を把握し、最初に明文化したガバナンスのルールを作ることが必要。信頼関係はルールの上に作るべきです」と強調した。

講演Ⅰ
M&Aは格付けにどのような影響をもたらすのか

【講演Ⅰ&パネリスト】
根本 直子
スタンダード&プアーズ(S&P)・ レーティング・ジャパン
リサーチフェロー・マネジング・ディレクター

最近の日本企業のM&Aは、件数増加、取引金額の大型化、取引倍率の上昇傾向が顕著になっている。S&Pの根本直子氏は「M&Aの競合的地位などへのプラス効果は実現に時間がかかる一方、財務へのマイナスの影響は即座に顕在化するため、格付けにネガティブな影響を及ぼす可能性があります」と述べ、M&Aを受けて上昇するケースも多い株価との違いを強調した。

格付けは、カントリーリスクや産業リスク、競合的地位などからなる事業プロフィールと、キャッシュフローやレバレッジ指標などの財務プロフィールを合わせ、さまざまな調整要素を加味して決める。M&A後も格付けを維持するには、事業収益の安定化のほか、増資など買収資金調達に伴うレバレッジ指標悪化を軽減させる必要がある。根本氏は「今後は格付けに影響しないM&A実行は難しさを増します。財務面の影響をうまく管理することが課題です」と述べた。

【講演Ⅰ】
石田 俊也
スタンダード&プアーズ(S&P)・レーティング・ジャパン
広報マーケティング部

同社広報マーケティング部の石田俊也氏は、M&Aの際に企業が活用できる経営ツールとして、自社の信用力への影響をシナリオに応じて評価する「レーティング・エバリュエーション・サービス」と、買収候補企業の格付けがない場合の信用分析を行う「プライベート・クレジット・アナリシス」を紹介した。

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