中国の金融改革、狙いは「人民元のSDR入り」だ 米英両国への根回しも着々と進んでいる

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この場で人民元がSDR(特別引き出し権)のバスケット通貨に採用されるとの見方が強まっている。SDRとはIMFが加盟国に割り当てる準備通貨。現在は米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円で構成されており、人民元は「第5の国際通貨」を目指しIMFとの協議を続けてきた。

8月11日、人民銀行は人民元の対ドル為替レートの決定方式を見直したが、これもIMFの指導に沿ったものだ。

習近平国家主席は9月の訪米時、10月の訪英時に、両国政府からSDR入りについて支持を取り付けている。採用の可能性はかなり高まった。

中国政府には、「国際通貨を目指す」という名目で、金融改革を進めたいという思惑もあったようだ。一方で冷やりとする動きもあった。

8月の制度変更後、元安観測の高まりから、人民元をドルに換える動きが盛り上がった。「このときは資本規制のおかげで流出を防げた。資本取引の自由化を急ぐと危ないと痛感したのでは」(北京の国際金融筋)。人民元が使い勝手で既存の国際通貨に劣らないようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。

「週刊東洋経済」2015年11月7日号<2日発売>「核心リポート03」を転載)

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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