消防車国内トップのモリタ、「薬剤」効果で業績躍進《オール投資・注目の会社》

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「スプリネックス」の威力 意外な“穴場”を開拓

スプリネックスと通常のスプリンクラーの最大の違いは、そのコンパクトなサイズ。水で火災が広がるのを抑制する通常のスプリンクラーは、一般的な老人ホームでも12・8トンもの水量を使用するため、水槽と太い配管の設置が必要。

これに対して、スプリネックスは水の4倍の消火能力がある無害の薬剤を用いる。薬剤タンクは標準的なもので108リットルのものが2本のみ。スプリンクラーに比べ配管が細いこともあり、施工の手間が大幅に低減できる。

モリタは01年以降、この製品を販売してきたが、この数年、売上高が倍々ゲームで増え続け、前期は30億円程度になったもよう。急増の理由は、小規模老人ホームへもスプリンクラー設置が義務づけられ、09年4月から12年3月までの3年間、厚生労働省から設置工事に対する補助金が出たためだ。

この補助金が今13年3月期になくなるため、老人ホーム向けは減少することが避けられない。ただ、モリタは次なる市場を開拓している。その一つが厩舎である。

競走馬生産で国内最大手の社台グループ(北海道)からモリタに話が来たのは、スプリネックスの認知度が高まりつつあった10年秋。競走馬は1頭数千万~数億円と高い資産価値を持つが、厩舎への消火設備の設置は義務づけられていない。藁を敷いている厩舎は火の回りが早く、これまで多くの馬が命を落としてきた。

北国の厩舎に、水を使わず配管凍結のおそれがないスプリネックスはお誂え向きだった。すでに社台グループだけで、30棟を超える厩舎に導入。「ほかの生産牧場にも売り込み、厩舎向け事業を大きくしていきたい」と、モリタ防災テックの葛本悟美専務は語る。


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