東京は世界の都市間競争に勝ち残れるか 2025年、五輪後に東京の真価が問われる

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このように、パリでも都市開発計画が進行中ですが、その特徴は、単に都市機能を集約して高層化を目指すというより、高い環境基準を設定し、幅広いパブリック・スペースを確保しながら、低層や中層の住宅やオフィスなどを生み出すことを目指している点にあります。

さらに、国際的に名高い建築家の起用によって美的外観を重視した都市空間を生み出している点も、大きな特徴といえます。人口増加や雇用創出という現実的な課題と向き合いながらも、都市空間の公共性や美的側面を重視するパリは、他の都市と比較してもきわめて際立った都市づくりを行っていると言えるでしょう。

2025年に東京の真価が問われる

私は、東京のターゲットイヤーは2025年だと考えています。その理由は、現在、五輪に向けて加速している多くの都市開発プロジェクトの全貌が見えてくるのは、五輪が終わって5年くらい経過した時点ではないかと考えているからです。その意味では、五輪終了後も、東京のパワーダウンはすぐには起きないのではないかと思っています。

しかし、その一方で2025年以降についてはシナリオが2つに分かれる可能性は否定できません。もちろん東京が五輪で弾みをつけ、パワーアップを続けるという楽観シナリオもあります。ところが、ここ数年、世界の多くの国際会議で東京の話をしてきましたが、そこで気になっているのが、2025年以降の東京圏での人口減少局面への移行です。

先進国での東京のライバルであるロンドンもニューヨークも、2030年に向かってそのまま人口増加を続けます。すなわち、東京のパワーダウンの危惧が始まる一方で、ライバル都市は依然としてパワーアップをすることができる与条件が存在しています。その状況で東京はどうすればよいのか。その具体的なシナリオを近いうちにまとめなければならないと考えています。

市川 宏雄 明治大学名誉教授

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いちかわ ひろお / Ichikawa Hiroo

明治大学名誉教授/帝京大学特任教授/一般社団法人 大都市政策研究機構・理事長/特定非営利活動法人 日本危機管理士機構・理事長。

1947年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、ウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了。1997年、明治大学政治経済学部教授に就任。専門は都市政策、危機管理、テレワーク、次世代政策構想。「世界の都市総合力ランキング(GPCI、森記念財団)」主査。『東京一極集中が日本を救う』(ディスカヴァー携書)、『東京2025』(東洋経済新報社)、『山手線に新駅ができる本当の理由』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など著書多数。

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