タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている! ニコラス・シャクソン著/藤井清美訳 ~オフショアの実態を克明に描きだす

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(2)について、1991年に世界最大の銀行詐欺を起こして営業停止になったBCCI(マネーロンダリングが企業戦略の一環であった?)をめぐる事件でのイングランド銀行の非協力的な姿勢は、取りも直さずシティは世界1位のオフショアセンターになっていることを示すと力説する。英国議会で作られる法律はシティを除外し、その結果シティが中心となってタックスヘイブンの外縁部分に相当する上記王室属領と海外領土を実質支配する構造となっている。オフショアに流入した資金はシティに還流し、英国の金融立国としての狡猾な知恵(仕組み)が十二分に発揮されている。

しかし米国も負けてはいない。米国で2番目に小さいデラウェア州には、フォーチュン500社の3分の2近くが法人登録をしており、所得が高いほど税金が安くなる逆進課税が導入され、また証券化に最適の法制度も作られた。

著者はタックスヘイブンの制度の生成、発展、そして当該国間の誘致競争など通して、金融の規制緩和とグローバル化の中心にオフショアがあったことを克明に描きだす。その実態に迫った、時宜を得た一冊である。

Nicholas Shaxson
ジャーナリスト、英王立国際問題研究所研究員。フィナンシャル・タイムズ、『エコノミスト』はじめ多数のメディアに寄稿。著書に、アフリカの石油が引き起こす政治腐敗や貧困を暴いた『Poisoned Well:The Dirty Politics of African Oil』など。

朝日新聞出版 2625円 446ページ

  

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