悩める資生堂の賭け 禁断の化粧品ネット販売を開始 

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ドラッグやネット台頭で低迷する専門店販売

資生堂にとってネット進出は苦渋の決断だったに違いない。その最大の理由は1923年に自ら構築した「チェーンストア制度」にある。同制度では契約を結んだ専門店に自社系列の販社から商品を卸すだけでなく、販促物の提供や美容部員の派遣を実施。日本全国に地域密着型の販売網を築くことで、高度経済成長下、業績を伸ばしてきた。

しかし、97年の再販制度全廃を皮切りに化粧品の価格競争が激化。ここ10年は低価格品を多く取り扱うドラッグストアが販売チャネルとして存在感を増している。さらに近年は化粧品のネット通販も普及。ドクターシーラボなど通販に軸足を置く化粧品メーカーの伸びが著しい。

こうした中、資生堂では90年代に40%を超えていた国内の売り上げに占める専門店比率が25%程度にまで縮んだ。つれて、国内の売上高も11年3月期には3828億円と、10年間で1300億円近く減少。「(専門店を軸とした)ビジネスモデルを使い続ける中で、資生堂の愛用者が少しずつ減ってきてしまった」(国内化粧品事業部長の高森竜臣常務)。

同業他社も次々とネット販売を開始する中で、このまま専門店モデルに固執していたのでは時代の流れに取り残されてしまう。とはいえ、ネット販売を始めれば“中抜き”によって販売店を追い込む可能性もある。「専門店を切り捨てるのではなく、全国の店舗網をどうやって生かすか」(高森常務)--。浮かんだのが、情報提供や化粧品販売だけでなく、専門店への誘導もできるサービスの構築だった。

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