岐阜発「楽園企業」思わず笑える「傑作ドケチ」 好業績なのに、廊下は真っ暗!その理由は?

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山田氏に「ここまでドケチに徹する理由」を聞いたところ、いくつか意外な答えが返ってきた。下記の山田語録を読んでいただくと、ドケチは「会社のため」「節約のため」だけではなかったことがわかるはずだ。

ドケチは「会社のため」だけではなかった!?

1.「玄関や廊下で仕事をする人はおらんから」

上場会社が、本社玄関や廊下の電気代までケチる理由を聞くと、「玄関や廊下で仕事をする人はおらんからな」と、山田氏からは拍子抜けするほどシンプルな答えが返ってきた。確かに、玄関や廊下で仕事をする人間はいないので「ムダな電気代」ではある。

しかし、山田氏は「蛍光灯をこまめにつけたり消したりするほうが、むしろ電気代は余計にかかるんや」とも語っていた。つまり、社員たちに引きヒモ式蛍光灯を使わせてまで「節電」する理由は、「カネのためではない」ことになる。

2.ドケチは、社員に「コスト意識を植え付ける」最良の教育やから

では、「本当の狙い」は何なのか。山田氏の真意は、次の言葉に表れているように思う。

「電気をこまめに消すのは、『節約する意識』を体に覚え込ませたいから。ドケチは、社員に『コスト意識を植え付ける』最良の教育やからな」

社員に「コスト意識」を磨いてもらうために、わざわざ「目に見える仕掛け」として、一人ひとりが蛍光灯をこまめに消すように習慣づけていたのだ。電気をこまめに消灯することで、電気代は逆に上がったとしても、それを習慣づけることで、ほかの場面でも「コスト意識」が自然と発揮されるようになってほしい、というわけだ。

3.「小さな節約」をできない人間に、「大きな節約」ができるはずはない

「コスト意識」の話をしていたとき、山田氏が言った忘れられない言葉がある。

「そもそも、各職場で身の回りの『小さな節約』をできない人間に、仕事がらみの『大きな節約』などできるはずがないやろ」

「本当のコスト意識」は、電気代などの身のまわり回りの「小さな節約」にこそ如実に表れる。「どうせ会社のカネだから」などと「小さな節約」に無頓着な人間に、製品設計や工場建設などの、より「大きな節約」を求められる仕事をできるはずがない、ということだ。

「山田式ドケチ術」は「会社のため」だけでなく「社員のため」でもあることがわかる。だからこそ、「儲かり続ける会社」でありながら、山田氏は「ドケチ」に徹底してこだわり続けていたのだ。

蛍光灯に限らず、社員の「小さなコスト意識」をつねに研ぎ澄ます山田式仕掛けの数々は、今も同社内で生かされている。それが、同社が「儲かり続ける」原動力になり、また「日本一“社員”が幸せな会社」を支える土台にもなっているのだ。

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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