「オラオラ系上司」の時代は、もう終わった 今、求められる新たなグローバルリーダー像

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アップルのスティーブ・ジョブズはその気性の激しさ、周囲の人に対する厳しい態度で知られていたが、GEのジャック・ウェルチ、アマゾンのジェフ・ベゾスもその「非情さ」が物議を醸すこともあった。

そうした強烈なトップの中にはたぐいまれな決断力とスピード感を持ち、ブルドーザーのように突き進み、結果的に企業を高い成長へと導き出す人も少なくない。敵を作ることも恐れない度胸と豪胆さが圧倒的な求心力、団結力へと結びつくポジティブなサイクルを生み出せば、競争力は高まるわけだが、むやみやたらに権威だけ振りかざす割に、決断力もない「バカ殿」や「暴君」は始末が悪い。

なぜ、できる経営者は非情なのか

なぜ、経営者は非情なのか。ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院の研究によると「人は権力を持つにつれ、より自己中心的になり、自信過剰になる。権威のない格下の人々の意見を無視したり、または理解できないようになってしまう」と結論づけている。また、別のカナダの脳科学者による研究では、「権力が、共感をつかさどる脳の細胞を破壊し、他人の心や気持ちを感じ取る脳内システム機能を低下させる」という結果が出た。

米国では最近、IQ(知能指数)に代わって、心の知能指数と言われるエモーショナルインテリジェンス、すなわちEQ(他人の感情を理解し、よりよい対人関係を築く能力指数)を重視する動きが強まっているが、このEQの専門家が、100万人超に対して、その地位と指数の関連性について調べてみた。すると、マネージャークラスからCEOまで、地位が上がるごとに指数が一貫して下がり、結果として、CEOはどの職位よりもEQが低い、ということがわかった。

経営者には強いサイコパス(精神病質者)気質を持つ人が多い、という研究(2015年8月7日記事:企業経営者には強いサイコパス気質がある)もあるが、イギリスのジャーナリスト、ジョン・ロンソンによると、CEOのサイコパス率は4%で、一般の人の4倍も高かったという。つまり、CEO25人に1人はサイコパス、というわけだ。

「愛されるより、恐れられろ」。16世紀の思想家マキャベリは「君主論」の中で説いたが、多くのトップが最終的に「君主化」することを示すデータや調査は実に多い。もともと共感力の低い人が成功を勝ち取りやすいのか、あるいはトップになって共感力を失うのかわからないが、両方が絡み合い、多くのトップが「情」を失っていく。

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